「すごいねー雨」



砂浜の端。すぐ横には山がある、今いる位置。大きな岩は、不思議な形をしていて窪んでいるため、(うむ。まさに、こんな感じだ→⊂)あまやどりが可能である。



ここから、砂浜は見えない。
人々はきっと、あの食べ物屋が、連なったところに避難しているんだろうか。






「冷たいね。あ、エース、ちゃんと拭いた?」


「ん??あー、おれは大丈夫だ」






メラメラの実のお陰で体温高ェし。こんなことくらい、別にどうってこと無い。
むしろ、おれはお前の心配をしたいくらいだ。






「だめ。ちゃんと、拭いて」







そう言って、おれの二の腕に手をかける。小さな手からはひんやりとした低い体温を感じる。ああ、冷えているんだなあと分かると体は勝手に動く。








「えっなに?」




"おれで"温めてやりたくて、大切にこの腕に包み込む。触れてしまえばもう分かりきったこと。止まらない。止められない。

指を素肌の上で滑らせ、彼女を確かめる。




正直、積極的にこの姿を他の野郎に見せたいとは思わないが、一方で、自慢したいという気持ちもある。おれの彼女どうだよ。ん?可愛いだろ?、と見せつけてやりたい気持ちも少しはある。



けど、

今、この二人きりの空間、この姿を見ているのはおれだけ。
完全に独り占めというわけだ。独占、その言葉に優越感を感じながら、温かさを共有する。




「やっぱりエースはあったかいね」


「だろ?」




「ずっとこうしてたいなあ」






ゆっくりと優しく、背中に手が回される。その甘い囁きにはさすがのおれも照れてしまう。



けど、おれは男。
こんないいシチュエーション逃すわけにはいきません。




「えっ?ちょ、なに?」




後ろで結ばれた何とも無防備な蝶々結びを解く。





「シたい」

「こ、ここ、砂浜だよ?」

「尚更だ」

「な!何が!」




「いいだろ?たまにはこんなんも」




テンガロンハットを地面に落とすついでに体を少し離したら、下を向く彼女。

あー、だめだったかー。じゃあ、雨やんだら船戻ってからにしよう無理強いなんてしたくねえ、と、肩を落としていると一言。





「エースがそう思うなら……わたしもそう思う、よ」


「それって、」


「……いいよ。た、たまには、……ね」






前言撤回。





やっぱり彼女を、他の野郎に見せるなんて実に許しがたい。






続く

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