「俺のどこが好き?」



ふらふら学校に来てみると、ロープを持って、校舎のほうへ歩いていく名前を見つけたので、思わず人目に付かないところへ連れてきた。オサムちゃん呼びにいかなきゃいけないのに!と、プリプリ怒られた。かわいい




「どこって、言われても、」

「困る?」

「うん」

「…………そっか」




「ごめん…。好きなのは好きなんだけど、どこが好きなのか言えって言われたら困るの。一目惚れだったから、やっぱり外見なのかな?でも、仲良くなるほど好きになっていったし…何なんだろう?てか、その質問さっき白石にもされたんだけど、返せなくてずっと考えてたの。でも、言葉にするのが惜しいくらい千歳のこと好きなんだと思う………。えっ?わたし何言ってんの!!恥ずかしい!!!!」


「名前愛しとう!!!!むぞらしか!!!!っくううううう!!!」


「へっ!?なに千歳!!ちょっ!!くるし、!!や、めっ…!!」



何を言ってくれるかと思いきや、ほんとに何を言ってくれるんだ。苦しくなるほど嬉しくて、辛くなるほど心臓を締め付けてくる彼女に、俺はやられてしまった。これだから困る。不意をついてくるのはどうかと思う。それが無自覚って言うんだから、さらに厄介。けど、愛されていると確信できることが本当に幸せ。



「俺も、好いとうってなんぼ言うても足りんね」

「やっ、ち、と、」

「好いとう、名前……好いとう好いとう、…好いとうけん!!」

「ちょ、ここ、学校!」



力の限り抱き締めるから、名前の抵抗なんてゼロに等しい。ぐんぐん、と耳の下辺りに鼻先を押し当てる。あーもう。本当に好きすぎてツラい。この匂いも、柔らかい抱き心地も、慌てる姿も全部、全部俺のもの。他のヤツのものになんてなろうもんなら、力ずくでも奪う。何をしてでも。そこに彼女の意思があれば別だが。



「しぬかとおもったよ…ちと、ん…!」


名前が他のヤツに、こんなことをされてるのを想像したら、ひどく動揺した。衝動で、体がキスしようと決めたらしい。抱き締めるのをやめて、ほっとする彼女の顔を一瞬見てから、唇を奪う。


本当に、好きで好きで好きでたまらない。

こんな自分勝手で一方的なキスにも、俺にしがみついて必死についてこようとする彼女。なんでこんなに、なんてもう思わない。 ただ、俺のことが好きだから、だけ。




「何してんすか」

「あ、ひかる……っ!!」

「千歳先輩、そこまでにしてくださいよー部活でこの人おれへんかったら、大変なん分かってはりますよね?」

「んー」





そして、俺の敵、後輩の財前光。




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