「なー、ルフィ」

「ん?なんだ?」

「アイツ誰だ?目の下のクマ、やべェやつ」

「あー。隣のクラスの、トラファルガー・ロー、ってヤツだなたぶん。めちゃくちゃ頭良いんだぜ!」

「ふーん…」











用があって、妹の部屋に入ったら、男とツーショット写真が飾ってあった。そんなもの、前までなかった。それが、アイツ…トラファルガー・ローを意識するようになった発端だ。そして、それに衝撃と落胆と動揺と多大な嫉妬心を覚えた俺は、何の用で入ってきたのかも忘れ、妹の部屋をすぐに出た。



そのあとすぐに、妹とは似ても似つかない、双子の兄であるルフィに聞いたその男の名前。



ちょっと本当にこれはやばい。ただの、"オトモダチ"…これだったら何も問題はない。しかし、ただの"オトモダチ"でツーショット写真撮って、部屋に飾るか?普通。…どうする?もしも、だ。もしも、トラファルガー・ローがおれの妹の、"か"から始まって"し"で終わる三文字だとしたら?決まっていることがひとつ。おれは、そいつを殴る。これだけだ。







「ちょっと、お兄ちゃん?そんなにご飯睨み付けてどうしたの?」

「…」

「エースは、何かと戦ってんだ。放っとこうぜ」

「う、うん…。?」




そして、その夜は案の定、妹の顔が見れなかった。











それが一ヶ月前のこと。おれは結構、意気地無しなほうらしい。ていうか、ついにルフィに言われた。エース、そういうの何て言うか知ってるか?シスコン、って言うんだぜ、と。なんと言われようと構わない。おれは、あんな人相の悪い、クマのひどい男に。愛しの妹は渡さん!!



「エースー!妹が来たぞー」

「〜〜〜っ!?」



同じクラスのヤツが、唸っているおれを呼んだのはいい。なまえがルフィと一緒におれの教室に来るのも珍しくない。が、しかし、あれはどういうわけだ。なまえの隣でニヤニヤしてるのは、あの…!あの!あの、写真に写っていた、トラファルガー・ローではないか。絶賛、おれの悩みの種!と、とりあえず、妹はおれに用があって、おれのとこに来たわけだ。呼ばれた以上、無視するわけにはいかない。






で、何て言えばいい?「で、お前はなまえの何?」これぐらいで良いだろう。おれは兄貴だ!そしてその前に男だ!大切に思う女を、心配して何が悪い!




そんなことを考えているうちに、ついに廊下で待っていた二人の元へ着いてしまった。なんだよ、コイツ。やけに近ェ。離れろてめェ…。






嫌な予感しかしない。




「あ、お兄ちゃん!今日ね、わたし、帰るの遅くなるかもしれないから、ご飯作ってね。先に食べてくれていいから!」




もしかして




「デート、ですね」

「ちょっ…ローくん!」

「あー、悪ィ悪ィ。つい」




ついじゃねェよついじゃ。なまえも顔赤くして、腕掴んでんじゃねェ。




「で、デート…だと…?!」


「あ、お兄ちゃんにはちゃんと紹介してなかったね。トラファルガー・ローくん。三ヶ月前から付き合ってるの!」








「聞いてねええええええええええええええええええ!!!!!!!」





なんだよ。お兄ちゃんには、ってことは、ルフィ知ってたのかよ…何なんだよ…折角、兄貴の威厳ってやつを見せてやろうと思ったのになんだよ。もうそんな感じかよ。いや、だとしても、おれはなまえの兄貴だ。おれは、コイツと一緒に風呂に入ったことだってあるんだぜ!!!





「妹はやらん!!!」

「お兄ちゃん!?なんで、ローくん殴ろうとするの!?」

「ちょっと黙ってろ」

「おにいさん恐いですよ」

「てめェにおにいさんなんて呼ばれる筋合いはねええええええ!!!!!!」






お兄ちゃんの悩み




「エース、風呂入りてェんだけど」
「……(ぶくぶくぶくぶく)」
「(…アイツのこと紹介されたのか)」
「ルフィ、おれは兄貴だ」
「知ってる」


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