「白石くんにとって"一番の幸せ"とは?」






月刊プロテニスの取材。全国が終わってから、少し落ち着いてやってきた取材の依頼。


最早、テニスとは関係のない質問も多い中、最後だと言われて、聞かれたんがこれ。

俺にとっての"一番の幸せ"?





一番か………

テニスしてるんも楽しいし、みんなとおるんも楽しい。家で家族と寛いでる時は落ち着くし、授業の問題解けたときも嬉しい。観葉植物育てるんもおもしろいし、薬草の図鑑見てるんもおもしろい。エクスタちゃんと戯れるんも好き。美味しいモン食べてるときもええなぁ。



なんやろなぁ



俺にとって、一番?




………やっぱり、それは、彼女やなぁ

テニスのことは無知。やけど、俺のテニスのいろんな話を嫌な顔ひとつせんと、うんうん、と聞いてくれる。寧ろ、楽しそうに、興味津々に聞いてくれる。前に、「なんでそんな楽しそうに、聞いてくれるん?」って聞いたら、嬉しそうに、「蔵之介が、嬉しそうに話してるから、わたしも嬉しいねんなー」と言われた。




彼女の嫌なところなんて、嫌いなところなんてひとつもない。

彼女は、息の抜き方は知ってるから、我慢はきっとしてないはず。

甘えてくんねんけど、支えてくれてる。って、どんな器用な子やねん。あーかなわんなぁほんま。

向こうは、部活もやってへんし、毎回試合を見に来てくれて、その度、差し入れも持ってきてくれて。しかも、レギュラー陣の。
俺には、弁当も作ってくれるからまだええけど、

ほんまはちょっと妬いてたりする。




どんだけ出来た彼女やねん!完璧やん!ってみんなに言われるけど、完璧ってわけちゃうしなー。抜けてるとこもある。


たまに、デートの待ち合わせに遅刻することもあるし(あんな可愛く「ごめんっ!」って言われると許さへんわけにいかんやろ)、授業中も寝てることあるらしいし、夜中に「会いたいなぁ」って電話、もしくはメールが来ることもあるし(試合の前日とかは避けてくれてるし、俺も会いたいから余裕で、いや、むしろ食い気味で会いに行くねんけどな)。



好きって言ってーとか言われることもそりゃたまにはあるし、ちっさいケンカやってする。







幸せ、か。




テニス部のメンバーとおるんも、楽しいしおもろいし、好きや。今しか、一緒におれへんって分かってるし、幸せや。





けど、一番といえば、嘘は吐かれへん。間違いなく、なまえとおるときやな。なまえがおって、俺がおって。ほんで、笑ってくれてたらほんまに幸せ。


きっと、家族になる存在。別れるなんて想像出来やん。もっともっと、なまえのことちゃんと知りたいし、知ってほしいと思ってる。なまえの未来には俺がおりたいし、重なることしか考えてへん。







「彼女と、一緒におるときですかね」









思い巡らす、数秒。


「確か、全国も、見に来てたよね?」
「来てくれてましたね」
「会場で、取材の資料とか持ってるときにこけちゃって、しかも迷ってて。でも、通る人たくさんいたのに、誰も助けてくれなかったけど、なまえちゃんが、声かけてくれて、道も教えてくれたわ!ほんと優しくていい子!」
「柴さんに会ったとは言ってましたけど、そんなことあったとは…。なんか俺まで嬉しいです」




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