久々に彼女の部屋に来たものの、そういう甘い雰囲気になる気配もない。なまえは、数日後に迫ったレポート提出日に向けて課題をこなしているために、おれに背を向けて、パソコンとにらめっこをしている。先にお風呂に入らせてもらったおれはというと、スウェットに着替え、タオルで髪を拭き、ソファに座って、なまえの家のテレビで録画していた深夜番組を見ている。


「レポートなんか、すぐおわんだろ」

「終わらないから困ってるの!」

「内容をちゃんと理解してないからじゃねぇのか?なんとなくしかわかってねぇんじゃねーの?」

「う、うう…」



なんて事を言うんですか、まったく。だからこうして、教科書を読み漁って、図書室で本を借りて、おまけにネットで論文を読んでるんでしょうが。


と文句を垂れる彼女と目が合った。



はー、今、キスしたいけど、したら邪魔になる。それに、このレポートたちが終わってくれないと、おれだって困る。



「早く終わらせてくれよ」

「なんでエースがお願いするの」

「そのくらい分かれよ。言わせんなバカ」

「? とりあえず、エースにくっつきたいので頑張ります!」

「あーハイハイ。がんばれがんばれ」



こうやって、少し甘いことを言っても通じないのに、おれを喜ばせることは簡単に言ってくる。高校を出て、すぐに就職したおれは、大学のレポートなんぞがどんなもんかなんてわからねぇし、大変さも知らない。けど、いつも、エースエースってうるさいなまえがレポートに独占されてんのは、ムカつく。うん、ムカつく。


おれは、ガキかコノヤロー





「〜〜〜っ!!」

「11時までに終わらせろ」


「! …うんっ!」


パソコンを睨む彼女の頬にキスしてやる(我慢我慢)と、おれをキラキラした目で見て、それから、カタカタとキーボードを鳴らし始めた。





はやくはやく






※※※

たしか、レポートに追われているときに書いたやつ。逃避したかった。


top



- ナノ -