「ちょっ!おいこら!エース!バカ!」

「何すんだよ!はーなーせー!!」

「エースが離してよ!」

「っるせぇ!」



靴を履いて、昇降口から校門へ向かって歩いていると、目の前にはエース先輩となまえ先輩。わいわいと何かの取り合いをしながら歩いてる。うちの高校で知らない人はいない、有名なカップルだ。言い合いはいつものこと。仲良しで、ふたりはとてもお似合い。笑い方も似てて、どうせ今だって、なんやかんやしてるけど、これもすぐ終わって、ニコニコして話しながら帰るんだ、きっと。


「またやってるね」

「うん」

いつもみんなから憧れの視線を集めるのだ。たまに食堂に現れた時だって、お財布と携帯片手に、ふたりで仲良くしゃべりながらおばちゃんに注文しておばちゃんも交えて話し始めてるし、文化祭では美少女コンテストと称された女装コンテストで、女装させられた少し無理があるエース先輩が「あれ?!おれの方が…?!これ、あるんじゃね?!」とか言ってるその肩を叩いて、「もー!エースキモイよー!キモいって!無いわ〜」なんてなまえ先輩は眉下げて笑いながら、写メ撮りまくってるし、体育祭では短距離で一位になったエース先輩は、クラスのとこに戻るより先に、なまえ先輩のとこいって、「見たか!!すげーだろ!」「うん、すごいすごい。かっこよかったー」「だろおおおお!!」なんてやってるし。
みんなからの視線は一気に集めるくせに、本人たちは全く気づいてないところがまたおもしろい。




「ほんと、理想のカップルだよねー」

「うん、素敵。」


わたしは、二人とはなにも関係無いし、ただの一つ下の後輩。こうして仲の良い二人を見ているのも二年目なのだ。


あ、エース先輩が強引になまえ先輩の手を取った。そして、ちょっと怒ったようになにか、エース先輩に向かって言ってるんだけど、彼はニコーーって笑ったまま。


いいでしょう。少しくらいなら。他の子なんて、何枚撮ってるか。



ぱしゃり



逆光でシルエットだけ。仲良く手を繋いで、楽しそうに校門をくぐる、二人の後ろ姿。



なんて素敵なんだろう。


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