ムッくんは大きな子どもみたいでおもしろい。お菓子大好きで、話し方もゆーったりしてる。持っているお菓子をあげると、ふわああって笑ってアリガトーってぱくぱく食べてしまう。おもしろい。


「なまえちんがくれるやつ美味しいのばっかり」
「でしょ!わたしのおすすめのお菓子たち!」
「なまえちん、お菓子くれるからすきー」
「わーい!ありがとねー」


こうやって、教室でわいわい騒ぐのはわたしとムッくんのいつものこと。

ん?廊下や教室がざわついてきた。なんだなんだ。



「なまえ、ちょっとおいで」
「氷室せんぱ、うわー!」
「室ちんじゃーん、ってあららー?」


ざわついていた原因はこの人、氷室先輩。今日もかっこいいので、たぶんいつもみたいに女の子達が騒いでたんだと思う。そんなかっこいい先輩と付き合ってるのはわたしで、そんなかっこいい先輩に腕を掴まれて、どこかへ連れていかれているのもわたしです。ひええー、わたし、どこに連れていかれるの!でもやっぱり紳士な氷室先輩!腕を掴んでいる手の力の入れ具合も、歩くスピードも、わたしの辛くない程度なのです。うーん、やっぱり好きです。




人気のなく、人の目にもつかない、第2体育館の裏というか、正面玄関から見たら、側面?のところにやってきて、氷室先輩に壁際に追いやられる。背中にひんやりと感じる壁。


「あっあの、氷室せ、」
「何やってんだ、オレ…」
「?」


あんなに、怒ったっていうか、よくわからないけど、奇行をとった先輩は、目線を足元へ落とし、がくん、と肩を落とした。


「ごめん」
「え、何がですか?」
「急にこんなとこ連れてきたりして」
「別に、先輩とだし、構わないです。むしろ、会えて嬉しいです」
「なんだ、なまえ。君は天使か」
「どうしたんですか?なんか今日変ですよ」


氷室先輩はわたしを見つめて、やんわりと笑った。なんだか、反省してるような表情をしていて、わたしはただただ不思議に思うだけだった。なんだろう、今日、どうかしちゃったのかな。先輩。



「アツシに、"好き"って言われてただろ?あれ、聞こえてさ。ヤキモチやいて、こんなことしちゃったんだよ」
「やいちゃったんですか、氷室先輩。かーわいーい」
「な、っ」
「先輩、大好きです」
「…まったく。なまえには敵わないよ」


わたしからぎゅっと抱き着いて、鍛えられた胸板に顔をすりすりしたあと、氷室先輩の匂いをたっぷり嗅ぐ。うわあいい匂い!先輩も、わたしの背中に手を回してくれて、抱き締めてくれた。髪の毛の匂いを嗅がれた。"いい匂いだなぁ"って言われて、頭を撫でられる。


「ヤキモチやいてくれる氷室先輩なんて大好きに決まってます」
「やいちゃうよ?そりゃあ、こんなに可愛い可愛い彼女なんだからね」
「…もうっ!先輩のばかっ!」
「はは、照れてる照れてる」


頬っぺたにちゅってキスしたら、「あれ?間違えてるのかな?もう一回してみよっか」と言われ、もう一度頬っぺたにしてみると、「こら、焦らさないでよ」って笑われて、噛みつくみたいに唇にキスされた。そのままちゅっちゅって何回もしてたら、何かがカランカラン…って落ちる音がして、氷室先輩が音のした方を見ると「これはヤバイ」と困ったように笑った。わたしもそっちを見ると、



「ひ、氷室……っ!!」
「なんでよりによって、監督に見つかるんだろうね」
「わたし、雅子ちん恐い」
「校内でそんなことを…っ!不純だ!」
「なまえは、オレが守るから安心してね」





氷室先輩とイチャイチャしてたら、雅子ちんに見つかった



「外周50周で手を打ってもらえませんか」
「70」
「ありがとうございます」
「他の教員になど、決して見つかるなよ。というか、校内でやるな」
「…授業なんで戻ります」
「(…こりゃまたやるな)」






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