ローは何だかんだ優しい。だから、いつも素でいられるし、恥ずかしいことだって言える。どんな相談もしてきたし、悩みだって打ち明けてきた。

けど、これだけは言えない。

だから、何も悩んでないように振る舞わないといけない。




思えば、いつも、わたしの話を聞いてくれるけど、ローの悩みは一切聞かない。上司へのちょっとした愚痴はあれど、悩みなんて、何も聞いたことがない。



「ねぇ、ロー」

「……ん?」



運ばれてきた砂ズリを早速、口に運び、わたしと目を合わさずに返事をする。



「悩んでることとか、ないの?」

「なんだ急に」

「だって、いつも聞いてもらってばっかだし」





攻撃は最大の防御。自分から聞いてれば、わたしの話にはならなくて済むよね!


ローの、悩み……なんだろ。彼女はいないし、好きな人とかいるのかな。デートしてる人とかいるのかな。ローって休みの日、何してるんだろう。今思えば、ローのこと大して知らないかもしれない。



「別にねーよ」


「えー。好きな子とかは?」


「……」


「わ!いるんだ!」


「……」




静かにジョッキに手を伸ばして、喉を鳴らしていく。


それを見て、わたしもグラスに残る梅酒を口に運ぶ。



「あんま飲みすぎんなよ」

「分かってるもーん」





ローに好きな子がいるなんて初めて聞いた。ローとわたしは入社以来仲良くて、けれど、ローって俺のテリトリーには踏み込むなって雰囲気だからあんまりわたしからはなにも聞かないでいた。





「いる」

「えっ?」

「…」

「きっ……気になる!!!」




ため息を吐かれる。



ローは、いつも、何を考えてるんだろう。






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