見渡すと散らばった服、そしてそれの一番上には昨日着てた記憶のある下着。




シーツの中を確認すれば、そこには素肌。






「おはよう」






妙に優しくて、妙に艶がかったその声にドキドキしながらも何も答えず、いや、驚きすぎて声が出ない状態なので何も答えられず、シーツを纏って、熱を帯びた視線から体を隠しながら、急いで散らばった服を拾い上げては身に付けていく。






顔面蒼白とはこのこと。





信じられない


そんなわけない



わたしがこんなこと




有り得ない。









「もう帰るのか?」


「帰ります」


「寂しいことを言うんだな」




「………」






玄関を探して、コーヒーを啜る彼の目の前を足早に通り、そこにあるヒールに足をはめる。焦れば焦るほど、うまく穿けない。広い玄関に飾られた、仲の良さそうな男女が写ったそれを一瞥した。





玄関から続く廊下の先、壁に寄り掛かりながらわたしを見る彼を捉えながらも目を合わせられないまま「お邪魔しました」と一言告げて、そこから出た。












なにやってんだろうわたし。
マジで有り得ない。


飲みすぎて記憶がないと言えど、本当にわたしは部長と、その、シてしまったんだろうか。もしそうだとしたら、わたしは最低な女だ。最低な女どころじゃ済まない。彼女がいる上司と寝たなんて、会社に広まったどうなることか。違う。そんな話じゃなくて、なんでこんなことになったの…!?ああもう、心臓がバクバクとうるさい。

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