「お前、部長に遊ばれただけじゃないのか」






ちょうど料理が運ばれてきて、ローにスプーンを渡すと、言われてしまった。



「は、はっきり言いますね……」




ローにはっきり言われて、さすがのわたしもダメージを受ける。自分で、`遊ばれたのか…´って思うより、こうやって人に言われるほうが何倍も現実味、真実味が増して苦しい。否定は出来ない。わたしは、シャンクスさんじゃないし。



「好きだったのか?部長のこと」

「………うん、そうだと思う」

「そうだと思うって…自分のことだろ」

「自分のことだから余計分からないのーっ」

「知るか」



ローは、それだけ言ってスプーンでカレーを掬った。わたしはというと、スプーンでオムライスのふわとろな卵を割る。



ローにキスされた時に思い浮かんだのはシャンクスさんの優しい笑顔。それが、どうしてかなんて知らない。けど、わたしでも分からないけどそうだったんだから仕方ない。



けど、わたしは、自分の記憶のないところで抱かれた人のことを急に意識し始めて、そしたら、相手にも求められて。きっと、したであろう行為を、今度は真っ昼間から、しかも会社でやってしまった。何してるんだろう、わたし。けれど、そうやって常識をも覆すくらいに、彼は魅力的だった。わたしが彼に惹かれるなんて、至って容易いことだったのだ。




「でも、その関係をやめようって言われたわけでもないんだろ?」

「うん。ただ、すごく冷たくて、変だった」

「しかも電話してたんだよな?」

「うん」

「彼女にバレたんじゃないのか?」



わたしの前で彼女さんの話はまったくしなかった。社内で聞く噂では、会社帰りによく一緒に帰っていたり、朝一緒に通勤してきたりとか、うまくいっている様子。



「分かんない」




いつも余裕そうな部長のことだし、二人の女と付き合うくらい、簡単なことなのかもしれない。否、わたしとは付き合うではなく、体目的か。辛いなぁ。だって、あんな、連絡先の渡し方されたり、スリル溢れるセックスに誘われたり、昨日だって、とてもとても…



「全部、一方的だったのかな」



今になってそう思う。彼にとっては、暇潰しだったのだ、きっと。だって、メールの返事は来ない。電話をかけたってかけ直してくれない。終わりなんだろう、きっと。




「そこに、もし、部長の気持ちがあったとしても、無理だろうな。部長には、社長の娘っていう彼女がいるし、もうじき結婚かなとか言ってたな。あの彼女は部長にベタ惚れ。もし別れを切り出しでもしたら?シャンクス部長は、会社にはいられなくなるだろうな。社長によって」


「あー…そういうこともあるね」

「どちみち無理だったんだ。お前と部長は」

「……そうだね」



ローの言うことが、正しすぎて何も言えない。

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