夢を見た。 シャンクスさんとわたしが、同じ家に暮らして、ただいまって言われておかえりって言って、キスされて、夜ご飯を用意して、二人で食べて。そしてご飯が終わったら、お風呂に入って、それからソファで座ってテレビでも見て。わたしのお腹には赤ちゃんもいて、シャンクスさんが笑いながらお腹を擦ってくれて。 なんて、幸せなんだろう。 けれど、起きたらそこには彼は居なくて、部屋のドアに繋がる廊下から声が聞こえてくる。 夢が現実になることなんて、そうない。この夢だってそう。現実になんてならない。シャンクスさんには彼女がいる。気分が高まるソースでもあったが、真面目なわたしにとって、苦しい存在でもあった。倫理に反しているし、背徳感を痛いほどにすごく感じる。 それ以上に、虚しさをずっと感じていたのだ。 電話が終わったらしいシャンクスさんが戻ってきた。もうすでに服を整えている。 「起きたか」 「おはようございます」 「俺、帰るし、お前も気ぃ付けてな」 「え?あ………はい」 「じゃあな」 「あ………さようなら」 昨日とはうってかわって、なんだろうあの態度。怖いほどに違う彼。あれは誰?あんな部長知らない。 どうして?わたし、何かした?なんで? そんなに前よりダメなセックスだったの?前がよすぎて、今回にがっかりした? なんでなんでなんで。分かんない。 でも、わたし、シャンクスさんに一度も好きだなんて言われてないし、ただわたしが勝手にそう思ってただけなのかもしれない。頼らせてくれて、かっこよくて、優しくて、いやらしいけど色気はすっごくあって、そんな人に、勝手に溺れて、彼の気持ちを勘違いしてただけなのかもしれない。 社長令嬢で、美人でスタイルもよくて気さくな、あんないい人とお付き合いしてるのに、わたしなんかに、目が向くはずがない。よくよく、今になって考えてみれば当たり前のことなのに。どうして気づかなかったんだろう。 体目当てだったのかぁ………… 帰ろう シャンクスさんによって、知らないうちに綺麗に畳まれた洋服を身に付けていった。 「お前、どうした?月曜からそんな顔なんて、うざくて仕方ねぇ」 「ごめんね」 会社を休むわけにはいかない。ローともあんなことがあったし、部長ともあんなんだし、顔を合わせたくないけど、不思議とローのことは気にしないことにしようと思えた。うん、酔ってただけ。 シャンクスさんが、ローが私のことが好きだとかなんとかなんかいってたけど、そんなこと、本人から聞いてないしね。 そして、普通通りのロー。 「話聞いてやる。昼、どっか外で食おうぜ」 「ん、分かった、ありがとう」 仕事してても、シャンクス部長の個室を何度も見てしまう。だめだめ。集中しなきゃ。 パソコンに向かう。 けれど、気持ちは入らない。 ← top → |