んー、お礼何にしよう…



送ってもらったお礼を考えているものの浮かばない。ない頭をフル回転させて、頑張っている。もちろん、送ってもらったお礼、と考えているが、そこには、また今度話したいだとか一緒に時間を過ごしたいなんていう不純な理由がある。

まずその前に連絡先聞かないといけないんだった。何て聞けばいいんだろう。






「あ!名前ちゃんおつかれさま!」

「お疲れさまです!」

「急なんだけど、写真展とか興味ある?」

休憩の途中、出勤してきた先輩から突然の話題。


「写真、ですか?」


「うん、そう。写真展の無料券貰ったの。けど、わたしは写真とか興味ないし、かと言って、捨てちゃうのも勿体ないし…どうかな?って思って!…あーこれこれ!」



いつもシフトが被る、25歳の先輩。おっとこれはラッキーチャンス。写真は嫌いじゃないし、興味がないわけではない。このチャンス、生かさねば!!



「いきます!貰います!」


「ほんとに!?わー、よかったー、ありがとね!」

「いえ、こちらこそ!」

「あと、それ、もうすぐ終わるから早目にね!もちろん行けなかったら行かなくてもいいから!」

「わかりました!ありがとうございます!」


二枚のチケットを手渡しされる。


よし、これでいこう。これなら誘える。


あの人、写真とか、興味………あるかな…?























「この前の件どうなった?」

「連絡は取ったんですが…それが…」

「わかった、俺がやる」

「いや、しかし、」

「気にすんな。任せろよい」




終わらない仕事。残業は、今週で何度目だろうか。サッチやエース、ジョズたちも帰ってしまったし、喫煙ルームには誰もいない。今吸ってるのが最後の一本。時計を見ると9時半。もういい時間だ。煙草も切れたし、帰りに寄ろう。



連絡先聞き忘れるなんて、俺はガキか。中学生かよ。この数日、悶々とその事だけを、考えていた。どうやって連絡先を聞くか。向こうからは……、いや、女から連絡先聞かせるとかそんな恥をかかせてどうする。また、この前みたいに、声かけるのも俺はいいが彼女が困る。かといって、レジで聞くわけにはいかない。






あ。そういけばいいのか。


短くなった煙草を捨て、喫煙ルームを出た。











(………来ないなぁ、マルコさん。)


ぐるぐるぐると頭を巡るのは彼のことばかり。バイトが始まってから、こんなことばかり考えている。休憩時にもらったチケットの写真展にどうやって誘おうか、どうやって連絡先を聞こうか、こんなことしたことないから、どうすればいいか、よくわからない。

けど、ぶつかってみるしかないと思うから、頑張ってみると決めた。勇気なんて滅多に出すことがないんだし、今、出してもいいよね!うん、余ってる余ってる!プラス思考でいよう!教えてもらえる!!のはずだ!!悪い方に考えれば考えるほど、そうなってしまうかもしれないし、プラス思考いれば、いいように事が運べるかもしれない。無理、出来ない!なんて言ってらんないよね。なんて聞こうかな…えっと、「連絡先教えてください」…直球すぎる。「お礼がしたいので、連絡先教えてください」よし。これでいこう。決めた。




「誰に、何のお礼したくて、連絡先聞くんだよい」



「えっ………………!?!?!???!?
?!!!!!!?!??!??!!」





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