「はふーー」


マルコさんに送ってもらった後、ソファに座って、喜びやら安堵やらその他諸々に浸っていた。


今まで、男の人の車に乗ったことがない訳じゃない。けど、夜に二人きりで乗ったことは無かったから、すごく緊張して、何を話したかなんてそんなにハッキリとは覚えてない。ただ、わたしが話しやすいように答えやすいようにマルコさんが話を運んでくれた。とてもスマートなんだけど、優しくて暖かくて、まとめると女性の扱いに慣れてるって雰囲気だった。悪い意味ではないし、寧ろ自分から話すのが得意じゃないわたしからしては、本当に助かったし、かっこよく見えた。


送りたいと言ってもらったとき、正直、いくら好きかもしれない男の人だとしても親しくもないのに送ってもらうなんて、って不安だったし、ホイホイ着いていく自分が嫌だったから狼狽えたけど、押されてしまってお願いしてしまった。今になって、それが正解だったと思う。



「なにも、なかった…」


如何せん経験の少ないわたしは、なにかしらされるんじゃないかとビクビクしてたけど、結局何もなかった。


……?なんで、期待してんのわたし。なにかされたかった?


そんなわけない。けど、残念と思ってる自分は少なからずいるわけで。車に詳しくない私でも分かるくらいの高級車、当然のごとく助手席のドアを開けてくれた。馴れた手つきで運転する姿を横から見ていると、いつもこうやって見ている人がいるのかな、なんて考えてしまって、いつの間にか、彼女さんがいるのか、とか聞いてしまっていた。



「もう何年もいねえよい」

「そう…なんです、か」


よかった…

なんて思って、胸を撫で下ろした。














好き、だと思う。


こんなにも、頭がいっぱいになるって、なかなか本格的な気がする。


年の差もあるし、マルコさんは会社幹部。とてもとてもお偉いさん。わたしはしがないコンビニ店員の大学生。



けど。











あー連絡先聞くの忘れたなぁ…と、ぼんやり思いながら、ソファで眠りについてしまった。




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