「じゃーな、マルコ!お先!」



明日の朝イチには仕上がってないといけない仕事があるため、残業。ご機嫌に出ていくサッチに向かって、気だるげにヒラヒラと手を振った。




ダルいなんて言ってられない。やらなくてはならない。


とりあえず、一服しよう



スーツのポケットからタバコを取り出しながら、喫煙ルームへ向かった。










箱を握り潰し、タバコを吸っていると、先程からチラつく、コンビニの彼女の姿。未だ手のひらに残る女特有の少し柔らかい腕の感触に、俺の気持ちは盛り上がる




気になって仕方ない



思い出しただけで、やる気出てきた。残業も頑張れる気がする。




さっさと済ませて、タバコが切れちまったから、あのコンビニで買って帰ろう。




















おいちょっとこれはどうしよう。

まさか、夜にいるなんて。あぶねえなとか思いつつ、自分の口端がくいっと上がるのが分かった







「あ」


と、俺を見るなりそう発したような気がした。

「いらっしゃいませー」


そして今度は、俺から目をそらして業務的な台詞。






明るい照明に、不快を感じながら少し荒れた雑誌コーナーの商品整理をする彼女に近づく。







「最近いねえと思ったら、夜入ってんだな」


「!! え、あ、……っ」


「?」





背中を押され、店外に出される。なに、来んなって?これはなかなか手厳しいな。結構傷付きそうだ。

けど、彼女から触れられただけなのに、それにさえもかなり嬉しく反応してしまう。


店の横。照明もなく、暗いそこに導かれ、やっと背中から手が離れる。あーあ、なんて惜しむ暇もなく、目の前に回り込んできた少女(俺からしたらまだ少女の部類だ)は俺に言う。ああそうか。コンビニの中には監視カメラがあるから、居心地が悪いからこっちに来たのか。





「あ、朝、来てくださる方……ですよね?27番のタバコとブラックコーヒーの……」


「そうだよい。やっぱり覚えてくれてんだな」

「! ハイ、まあ…」

「バイト、何時までだ?」

「もう、あと五分です」

「夜おせぇし、送りてえ。いいだろ?」

「えっ……い、いいです」

「用心だな。まあ、見知らぬ男にヒョイヒョイ着いていくよりはそっちのが良い」

「いや、そ、そういう、」

「でも、俺と見知らぬ仲とは言わせねえよい」



両手をスラックスのポケットに突っ込んで、なにも言わせないと言いたげに上から見下げる。彼女は、人の目を見る子だ。ずっと目が合ったまま、けれど俺はにやり、と笑うと、恥ずかしそうに足元に視線を落とした。




「お願いします」

「お安いご用」



思わず口許が緩む。なんだこの気持ちは。そして、俺がタバコを買うため、俺たちはもう一度店内に戻った。












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