「おい、マルコ。溜め息ばっかうるせェんだけど、どうにかなんねェの?」 「あー、悪ィ」 昼飯を食いに、会社近くにあるいつものラーメン屋に来ている。カウンター席ひ男三人。隣に座るエースに対してマルコは、頬杖をついたまま答えると、今度はエースが溜め息をついた。あ、どうもみんな大好きサッチくんです。 「ほっとけ、エース。たぶん、恋だ」 「は?!マジで?!」 「あァ…そんな気がする」 いつもならおれの言うことなんて信じらんねー、とかほざくエースが、成る程な……と言わんばかりに腕をくんで眉間にしわを寄せている。 おれも、エースと同じ格好で考え始めた。 にしても、最近、マルコの様子がおかしい。こんなの初めてだってくらいおかしい。仕事に支障はないが、書類を出しにマルコの部屋に入ると、デスクでずっとタバコの箱を見つめてたり、缶コーヒー片手にガラスの外をぼんやりと見つめていたり、自分の手をじっと見ていたり、 おれは完全に恋だと見た。マルコはこのこのについて、一言も、一切、口は割らないが、それ自体もうすでに怪しい。 タバコの量も増えたしな………っくううう!気になる!!!! 「サッチ、麺伸びるぞ」 「お、おお!」 ラーメンと炒飯のセットはもうおれの目の前にあった。運ばれて来ていたことに気付いていなかった。 ずるずる ずるずる マルコが恋かよ…正直、笑っちまうぜ!て思うが、よく考えればマルコはモテる。滅多にないが、たまにある会社のパーティーでもマルコにたかる女は、オヤジの次に多い。 なんだよー。いつも興味無さそうにしてたくせに、あん中から連絡先交換した女と、どうこうなっちゃってるワケか?いやいや、マルコと連絡先交換した女がいるとかそんな話聞いたことねェ。会社イチの情報通であるサッチ様に入ってきてないなんて、到底有り得ねえからそれはない。だとしたら?会社の外か。アイツ、会社から寄り道して帰ることなんてそう無いからな。おれたちと飲んでも、割りとすぐ帰る。キャバなんて、もっての他。女の匂いなんてしてねえはずなのに。 おいおいおい、気になるじゃねえかよい。あ、思わずマルコ口調になっちまった。んー、誰だ?うちの常務をこんなに骨抜きにメロメロにしてるやつは。っくううう!気になる!!!!!あ、メロメロ……?九蛇カンパニーの社長か?…いや、あれは無いな。マルコも興味無さそうだったしな。 サッチ。ゴチです。 ありがとよい 裏返しにされた伝票に書かれたメモがそこにあった。 「何してんだよ、おれ!」 ← top → |