信号待ちでよかった。彼女が投下した爆弾は、なかなかの威力を持ったもので、呆気なく俺の心臓は握られたように苦しくなった。なんだ、それは、あれか。テクニックなのか?大人の余裕はどこにいった、おれ。油断してたらしぬぞ。


" 帰りたくない "…なんて言われて、期待しない男がいるわけない。けれど、名前ちゃんに手を出すのは、まだ気が引ける。それに、この子もそういうつもりで言ってるんじゃないんだろう、と読み取れる。言ってしまった…!みたいな感じで、顔を真っ赤にさせてる。



かわいいな、くそ。


「え、あの、ちが、ちがうんです、えっと…っ」

「そうか、違うんだな、分かった」

「いや、あの、あ、いえ、ちが、わ、ないです…けど、」

「違わないんだな」

「あー!そうでもなくて、えっと…あー、んんん…」


「おもしれぇな、ほんと」



少しからかうと、身振り手振りを駆使して、わたわたしながら弁解しようと頑張ってる。愛らしすぎて、すげぇ抱きしめたくなる。


ニヤッと笑って、どっちなんだよ、と言ってみると、忙しく動いてた手をおろして、しゅん、と静かになった。




「帰りたくない、で、す」

「おれも。」


夜のドライブでもするか

と持ちかけてみれば、はいっ!と元気なお返事が返ってきて安心。


彼女が、緊張していてあまり話せないことは分かってたし、おれはそう話すことが苦手ではないため、会話をリードしてきたが、正直、彼女のことをたくさん知りたいと思うので、それでいい。

別に、会話が無くても苦じゃないし、むしろうるせぇのは嫌いだ。だから、心地いい。こうして、無理に話さず、ただ座って、たまに話して、あとはスマホも触らずに、窓の外を見つめたりしてる彼女の隣が。






帰りたくない、なんて言われたら、完全に期待するぞ、おれは。













「マルコさん喉渇いてませんか?」

「ん、そうだな。なんか飲みてぇな」

「あ!コンビニありますよ!」



最近、エースやサッチたちに言われてるように、おれは浮ついてる。けど、これで浮つくなって方が、難しいと思うんだけどな。

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