「あのっ、わたし……こんな店……っ」

「初めてか?」

「はい!緊張する…」







マルコさんが連れてきてくれたのは、ものすごく敷居の高いオーラの出ている、和食料理のお店。マルコさんは、来るなり、いつものやつください、あ、お酒は抜きで。と言っていた。



「ここ、会社の接待とか幹部だけで、よく来させてもらってる。味は俺が保証するよぃ。ちなみに、天ぷらは食べれるか?」

「はいっ好きです!」

「よかった」



そうか、接待やらで来てるから、いつもの、って言ってたんだ。なんだか、慣れた様子のマルコさんが、とても大人に見える。急に遠くなったように見えた。






奥の個室に案内された。落ち着いた和室には、高級そうな小物とか陶器とかも置いてあって、うん、落ち着かない。








「もしかして、試験中?」

「そうですね。でも、一通り勉強は終わったので、余裕はあります」

「偉いな。…いや、でも、連れ出しても大丈夫だったか?」

「そんなの全然構わないです!大丈夫です」

「ならよかった。息抜きにでもなればいいよぃ」





マルコさんと一緒にいて、息抜きなんて出来ない。むしろドキドキして仕方ない。何話そうって考えてるのに、何も浮かばないし、結局マルコさんが、話してくれる。緊張せずにはいられない。






「そういえば、さっきの写真展、いつにする?」



「結構遅い時間までやってるんで、平日でもいいですか?」

「ん、出来るだけ合わせる」


「…………明明後日、とか…?」

「明明後日?……あー……ん、わかった。空ける」



「いやっ!他に予定があるならいいですよ?」

「構わねぇよぃ。いつも飲んでる会社の奴らと、飲もうかって話してたんだけど曖昧な感じだったしな。無いのと同じだ」

「分かりました。…たのしみにしてますね」




「ん。俺も楽しみにしてるよぃ」







ふわって笑った彼に、わたしの心臓は捕まれていると確信した。




どんどん彼に、惹かれてく。




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