「授業つっかれたー!」

「5限まであるとねー」

「でもわたし、今日はバイトー」

「えったいへん!がんばって!」

「ありがとね」



美矢ちゃんはバイトらしい。テスト勉強もしなきゃいけないのに、大変そう。


「バス来るし、先帰るね!バイバイ!」

「うん、バイバーイ」




教室を出ていく美矢ちゃんの背中に手を振ると、わたしも家に帰って勉強するために、席を立つ。いや、どうしようかな、帰りの途中のカフェが空いてたら、お勉強させてもらおうかな。


同じ教室内にいた、他の数人の友達と、バイバーイと挨拶を交わし、教室を出た。

季節は冬。このテストが終われば、もう、2回生になるのかぁ。早いなぁ






携帯を出して、メールを開いても、マルコさんからの返事は来ていない。忙しいもんね。

写真展のことも思い出す。もうそろそろの気がする。ちゃんと誘いたいな。最近会ってないから、正直会いたい。けれど、マルコさんからの返信は来ていないし、またわたしから送ったら、しつこいと思われそう。どれだけ食い気味なんだよって引かれそうで怖い。バイトもないし、会える機会なんて無さそうだなぁ…はやく返信こないかなぁ






「よぉ」

「あ、割りと久しぶり」

「割りとって何だよ。元気か?」

「うん、割りと元気」

「だから割りとって何なんだよ」

「うーん、分かんない。キッドは?元気?」

「まぁな!」

「うん、元気そうだね」


目の前の棟から、キッドが出てきて声をかけられた。キッドとは、今は学科は違うけど、高校が同じでまぁまぁの仲良し。いつもわたしに無駄に絡んでくる。相変わらず目立つなぁ。


「今日は、彼女とご飯なんだぜ、いいだろ」

「ふーん。テスト近いのに余裕なんだね!あ、よろしく言っといてね、また遊ぼうって」

「任せろ。まあ、お前もすぐ出来んだろ、彼氏」

「う、うるさいな!ほっといてよっ」

「んじゃ、オレ行くわ。さみーからって風邪引くなよ!またな」

「うん、ありがとー。バイバーイ」


キッドは、高校時代からわたしの友達と付き合っていて、もうかなりの年月になる。相変わらず仲が良さそうで安心。……よし、わたしは帰りのカフェで勉強するんだ。今回もフル単でいこう。マフラーを少し上げて、少しでも顔の多くの面積が暖かいように埋めて、門へ歩き出した。













……………って、え?



見慣れた高級車と、煙草をふかしながら、ズボンのポケットに手を突っ込んでこちらを見ている男の人を発見。

もちろん、そんなかっこいい男性を女の子が見ないわけなくて、数多の視線を集めている。



「(マ、マルコさん!?)」



なんでここにいるの!?

うちの大学に用?いや、誰かを待ってる風。知り合いがわたし以外にもいるのかな。親戚とか?何にせよ、会いたいと思っていた人がそこにいるので、嬉しくて堪らない。わたしは、気がつけば、走ってマルコさんの元に駆け寄っていた。


「お。いたいた」

「マルコさんっこんにちは!…ここで、何してるんですか?」

「あー…お前のこと待ってた」

「! な、なんでですか?」

「これから用事あるか?」

「いや、ないです…」

「じゃあ、どっか行くか。腹減ってんならメシでもいいけど。とりあえず乗れよ」

「え、あ、…はいっ」



周りの視線を集めたことは、分かった。「何あれ、年上の彼氏?」「いーなー!かっこいい!」「大人の男って感じだったね!羨ましい!」なんて、聞こえて、ドキッとした。




それにしても、「わたしを待ってた」って、言葉がすごく気になる。




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