なに緊張してんだ、俺。しっかりしろよ。 彼女との、二度目の、家までのドライブ。未だ気を張った様子。 そりゃそうだろ、知り合ったばっかの、おっさんの車。気を抜いたらなにされるか分かんねーだろうな。まあ、今の俺にはなんもできねーけど。 「マルコさんの車って、かっこいいですよね」 「そうか?他に金の使い道がねぇんだよい」 「そうなんですか?」 「あー、いや。嫌味じゃねぇからな」 「? …はい」 会話進まねー 同僚には気軽に言える何気ない冗談も、この子相手じゃどうにもならない。勢いで、家に送るとこにはこぎ着けられたけど、実際に今になってみると、なんだこの不甲斐なさ。 俺は何をしてるんだ。はやく聞けよ、連絡先。そんなもん、仕事の取引で何度もしてきただろ。なんでこうやって、大事な時に限って、なにもできなくなるんだよ。 「あ、今日、満月ですね。きれい!」 「だな」 「あの、マルコさん、」 男なんて、情けない生き物。 本当に大事な局面では、ビビってる。 「なんだ?」 「えっと、その……」 「いや、俺が先にちょっといいか」 「はい?」 「連絡先、教えてくれねぇか」 やっと、ここまできた。 ← top → |