ソファで寝てよ、毛布あげるから。と、柳にお客さん用の毛布を親の寝室から取ってきて押し付けると、ありがとう、とお礼が降ってきた。そして、風呂上がりにやろうと思っていた残りの課題を済ませるため、机に向かう。



「数Uの課題か?」

「うん、終わってないからね」

「終わるのか?」


…え(  ̄▽ ̄)?だって、残っているのは考えた結果、分からなかった問題だけ。あとふたつ。そうだよ、柳に教えてもらえばいい話じゃないか!どうせ他のことじゃ役に立たないし。我ながら名案だ。

「教えて」
「仕方がないな」

なにが仕方がないな、だよ!それは泊めてあげてるこっちの台詞だよ!ばかやろう!何言ってんだ。そして、シャーペンを握っていると、ぬっと柳が現れた。うわ、家庭教師みたい。至近距離で驚いただけ!斜め上にある柳の顔を妙に意識してしまうわたし。

「あーこれか。んー、これはな、xをここに代入してな…」
「うんうん」
「で、yが分からないから、ここで出たこれを…」
「うんうん」
「これが、Aになる。で、この角はここと同じだから…」
「うんうん」
「分かってないだろう?」
「うん」



ハァ…とため息をつく柳だけど、お前が悪いんだからな!!!そんな色気出しやがって!!わたしは悪くない。だって、男の人とのこんな状況になんて慣れてない。

も…、もう寝る!!と椅子を立つと、柳を退かせてベッドに入った。電気は柳が表れた消してくれるだろう。いくら柳だといっても、所詮男。


思春期の男女ふたりが、夜、同じ部屋にいて、意識しないなんて、そんなことないでしょ?


「おやすみ!!!電気消しといて!」

一方的に言って、布団に潜った。バサッと頭から被って、もう寝てしまおうと思った。ドアの近くにあるスイッチを押してくれた柳。部屋は暗くなって、柳もソファに横になって、寝る準備をした。ハァ、ひと安心。これでドキドキしなくて済む。あとは、明日の朝を待つだけだ!なんて、思いながら瞼を落とした。 ……………………がしかし、身体に謎の温もりを感じたので振り返ると柳。

「キエエエエエエエエエエエイ!!!!」
「お前は真田か」

「なっなにしてんだ!変態!」
「俺にソファは小さすぎたのでな」
「…」



いや、近すぎて困る。こんなに間近で柳の顔を見るのは初めてで、しかも同じベッドの中って……なに考えてんだ柳!いや、少しでもそっちに考えた私も私だけどさ。ドキドキドキドキうるさい心臓の音が柳に伝わるのを防ぎたい。しかも、私は寝るときはノーブラじゃないと寝れないから…と考えて、体を捩らせて柳から離れようと試みた。


「それに」
「?」

「あの毛布では寒い」



だから、離れるな。と、私の背中に手を回し、私が離れようとするのを阻止した。柳の瞳は薄く開かれており、驚いた私の顔を見るなり、ニヤリと微笑んだ。



「期待、しているんだろう?」


「はっは?!なに言ってんの!?そんなわ、け、…っ!」

「お前は寝るときはノーブラなのか」




柳の長い指に、背中のホックの辺りを撫でられ、低く囁かれる。やめてほしいのに体は全く動かず、されるがまま。声を出したいのに、なにも言えない。大きい声を出せば、ブンちゃんが気づいてくれるだろうに。そして、スウェットの中に手を入れられる。ゾクゾク、と鳥肌がたち、柳の目から視線が離せないまま。


「お前は着痩せするタイプなんだな」


触られた。直に。どうして?女の子とこんな状況になったらこんなことするの?ああああ意味わかんない!!!




きみーをスクープー隠してもーだめさー


「うあああ!」

携帯が鳴った。ハッとして、すぐに柳の手を服の中から追い出して、枕元の携帯を手に取ると、"幸村精市"の文字。ベッドから飛び出て、柳を見ると、小さな子どもを見るような目で見てくる。なんだよ柳!違う。変態!ありがとう幸村!!こんなに幸村からの電話をありがたいと思ったのは初めてだよ!!!


「もしもし!!」

《どうしたの?そんな大声で。うるさいよ》

「ご、ごめんなさい!」

《明日、朝練にブン太を連れてきてほしいんだけど。絶対》
「わ、わかった!連れてく!」

《あとさ、柳、いるんでしょ?》
「えっ…え?!」
《エッチなことされないように気を付けなよ》


少し低い声で大きめの声で言ってきた幸村。じゃあね、おやすみ。で、通話終了。なんだ、あれは。なんで知ってんだろう?あ、柳は携帯に出ないし、家に連絡したら言われたのかな?まあなんでもいいけど、とりあえず、ばかやろう柳!!



柳は精市が言うなら仕方ないな、と呟いていた。私は携帯を持って、柳を一瞥したあと、ブンちゃんの部屋へ即刻避難した。






















少しでも気持ちいいなんて思った私、最低!!!!



風呂から柳が出てきた夜のはなし




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