それから、幸村がお腹空いたしコンビニに行きたいと言い出したので、深夜のコンビニに行くことに。家族が寝静まった家から、そーっと出る。






「明日ちゃんと返すし心配しないでね」

「うん」




ぎこちない会話。微妙な二人の距離。来た道を戻る。家までは少しある。

いつも、貶したり貶されたり、罵倒したり罵倒されたり、イジったりイジられたり、な関係だった私たち。幸村は大人しく、そしていつもより口数が少ない。




さっきのは?なに?

幸村が近すぎてなにも考えられなかった。拒めなかった。


これから幸村のこと、どんな目で見ればいいの?あんなこと言われて、マネージャーとして、うまくやっていける気がしない。



周りの目なんて気にしてたらやっていけない。うちのテニス部は、超強豪であるのに加えて、レギュラーはイケメン揃い。背も高いし、頭もいいメンバーが多い。ファンである女の子たちの言葉を気にしていたらやっていけない。だから、わたしは、一生懸命頑張ってきた。


それなのに、幸村たちはそんな目で見てた?ふざけるな。


立ち止まる。一歩先まで踏み出した幸村は、わたしを気にして振り返る。目を見れば、どうかした?って言ってる。





「わたしがみんなのために頑張ってるときに、なんでそんなことしてんの?」

「え?」

「最低」



ちゃんと練習してるのは知ってる。結果がすべてを物語っている。

けれど、嫌な気分。









「しょうがないよ。だって、唯一のマネージャーなんだから。しかも、女の子。じゃあ、ごめん。訂正する。他のやつが、エロい目で見てるかどうかは知らない。けど、少なくとも俺は見てるよ。なんでって、

おなまえのことがすきだから。

入部したときから、ずっと。」
















「え?は?ちょっと待って、…ん?なに?どういうこと?!えっ!?なになに!!!??」




「落ち着きなよ」





ムカつくな!なんだこいつ!と思っていたら、急になんか言ってきた。好き?誰が?誰を?幸村がわたしを?

は?



そして、幸村は歩き出す。




「ちょちょちょちょ、待って。どういうこと?」


「俺はお前が好きなわけ。だから、練習中だってお前のこと目で追いかけてしまうし、エロい目でも見てしまう。わかる?」


「う、うん。」


「そりゃ怒るよな。みんなのために働いてくれてるのに、そんな目で見られてるなんて。けど、仕方ないだろ、好きなんだから」


「えっ……」


「けど、俺から告白するのもなんか乗り気じゃなかったし、うまくやって気づいてくれないかなーと思ってたのに、何にも気づかないし。結局こんな、かっこわるい感じになるしさ」




追いかけるようにして幸村に追い付いて、食らい付いて聞いてみたけど、ちょっとよくわかんない。なにこの急展開。心臓が痛いほどドキドキしてる。


さっきの苦しい目をした幸村は?なんで気づかないんだよ、ってこと?


「あーもう、なんでさっき、お前、抵抗しなかったの?出来なかったわけじゃないだろ?」

「……うん」

「じゃあなんで?」

「…………」





分からない。けど、嫌じゃなかった。むしろ、期待してた。わたしは、自分で、


抵抗しなかったんだ。



幸村は、一年の頃からずっとレギュラーとして、全国制覇に尽力してきた。入院したときだって、ずっと、テニス部のこと考えてた。いちばん側で見守ってきたわたしが、いちばん、苦しみとか辛さ、楽しさ、すべて知ってる。


幸村は、まっすぐな人。


きらい?…ううん、そんなわけない。

すき?…わからない。






「けど、もう、今になって抵抗しないだろ?」






立ち止まったと同時に、お互いに目が合う。左手に、幸村の右手が絡んできて、三秒。目を閉じて、それから、














押し入れから幸村が出てきて、いきなり告白された、変な夜のこと







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