valentine | ナノ


「宜野座監視官!」
「…何だ」
「すきです!」


は?意味わかんないんですけど。突然の告白に呆然としていると、綺麗にラッピングされた袋を渡される。とりあえず受け取ってまじまじと眺めてから名前を見つめると、嬉しそうに微笑んだ。


「…何の真似だ」
「今日はですね、バレンタインなのですよ」
「…」
「ご存知でしょうか」
「ああ、知っている」
「ならば話は早いです」


さあどうぞ。そう言って名前は両腕を広げて迎え入れるような姿勢をとる。
は?意味わかんないんですけど。


「だから、何の真似だ」


同じ質問をすると、名前はきょとんとした表情で首を傾げた。


「今日は好きな異性にチョコを渡して愛を育む日だと縢くんが教えてくれましたよ?チョコを好きな異性が受け取ってくれたら了承の合図で、そこで誓いのハグを交わせば二人は永遠の愛で結ばれると」
「いやいや待て」


うっとりと話をしていた名前は宜野座の静止にぴたりと口を閉ざす。縢め余計なことを。宜野座は肺の奥底から深い深いため息を吐き出した。


「あれ、ひょっとして照れてます?」
「これが照れているように見えるのならお前の色相は濁るどころか真っ黒だろうな」
「安心してください。色相も視界も安定のクリアカラーです」


それはよかったな、なんて言える余裕もなく宜野座は頭を抱え込んだ。とりあえずバレンタインの起源となった話から掻い摘んで説明をしてやると、名前は納得したように何度も頷いた。本当に理解しているのか宜野座は少し不安になる。


「ははあ、私ってば縢くんに騙されたんですね。調べとけばよかった」
「全くだこの大馬鹿者め」
「でも宜野座さん、」


嘘を本当にしたら面白くありませんか。したり顔でそう言ってのけた名前の言葉を理解するより早く、名前は宜野座の胸元に飛び込んだ。突然の出来事に反応ができず固まっているのをいいことに、すりすりと頬擦りまでし出す。ようやく状況を理解した宜野座が引き剥がそうとするが、名前はさらに力を込めた。


「な、何をするんだ!それも職場の廊下で、」
「職場じゃないならいいんですか?」
「そういう問題じゃない!」
「すきです、宜野座さん」


今度こそ宜野座は固まった。普段の間延びしたようなのんびりとした声でも、仕事のときとも違う。あまりにも真剣な声音に不覚にも心臓がどくりと揺れた。名前を引き剥がそうとしていた手を、両手で包み込むように握った名前は、再び同じ言葉を重ねる。それからゆっくりと顔を上げた名前は女の顔であった。


好きは隙になる

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