骨と星と誰かの小指 | ナノ


名前の誕生日、屋敷は朝から賑やかであった。夜に行われるパーティーの準備で使用人があちらこちらを動き回っている中、司馬懿は名前に呼ばれ部屋へと向かっていた。今日は機嫌がいいだろうが、やはり足は重くなる。目標の部屋に着き、小さく溜め息を吐いてから扉をノックし名乗れば、澄んだ声で了承を示す声が聞こえた。声は澄んでいても心は汚れきった悪魔だと思いながら扉を開ければ、全身真っ黒のぬらぬらと輝く肢体に、頭だけが髑髏のように白い、見るからにヤバそうなヤツと目が合った。

「こっここ…、コブラバイパー…!?」
「あら、ご存知だったのですね、豚」

可愛いでしょうなんてにこやかに笑んで蛇の肢体をご機嫌に見つめる名前に、いくら名前の機嫌がよかろうと身の危険を感じた。

「可愛いでしょう、ではありません!何故絶滅危惧種が此処にいるんです」
「何故って、今日は私の誕生日ですから」

平然と答える名前に眩暈を覚えながら、司馬懿は必死に状況を整理した。

「…で、一体誰が誕生日にこんな物騒なものを贈るというのです」
「ああ、それはミャンマーにいる豚からです。先日電話で私が、「蛇って…神秘的ですよね…」と言ったのを目ざとく覚えていたようで」
「名前様の人付き合いが激しく気になりますし、どうやったらそんな会話になるのか見当もつきませんが、…確かコブラバイパーは中国で生息する毒蛇27種の中で、最強レベルの毒を持っているのではなかったですか」
「気持ち悪いくらいに詳しいのですね、豚。そのとおりです」

ガラスケースに厳重に入れられている毒蛇をにこやかに見つめる名前に一体何に使うのですかと訊ねれば、「いやですねえ、そんな野暮なことは聞くものではなくてよ犬」というえも言わせぬ名前の言葉に口を閉ざすしかなかった。よし、明日から名前様がくださる食べ物は口にしないことにしよう。
今日は長い1日になりそうだとちらりと毒蛇をみれば、ガラスケース越しで目が合い慌ててそらす。司馬懿は今日を生きていける自信を少しだけなくした。


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