骨と星と誰かの小指 | ナノ
「というわけで名前様、なにか欲しいものはございますか」
「加藤清史郎君です」
「無理です」
そもそもなにがというわけなのですかと先程の会話を何事もなかったかのように繰り出す名前に司馬懿は溜め息をはいた。この兄妹に関わると溜め息が止まらない。
「いえ、名前様の誕生日がそろそろですゆえ」
「あら、豚にしては気が利きますね」
「いえ、私ではなく子桓様が…」
「そうですねえ、豚ですからあまり大層なものは頼めませんね」
「私は豚ではありませんし話を聞いているのですか」
「お黙りなさい豚」
ぴしゃりと言われ口を閉じる。
「加藤清史郎くんが無理なら福くんで勘弁してあげましょう」
「名前様は私に人攫いをしろと仰せですか」
「では金目のものをよこしなさい」
「無理です」
何故私が金をかけなければならない。むしろ給料に見合わない労働をさせられている私に何かしてくれるべきではないだろうか。
「ならば、簡単にお金になるものがありますよ」
「は…そんなものがあるのですか」
「ええ、あなたなら簡単にできるわ」
高く売れるんですよ、人の内臓って。微笑みだけは聖母のような名前がそう呟いて、司馬懿は何故自分はこんなところで息をしているのだろうと思った。