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たまにはDVDでも一緒に観ようよと言ったところ、あろうことか奴はわたしのかけていた毛布を奪ったあげくにソファの半分以上を独占して優雅に本を読み出した。わたしの脳みそでは頑張ったってきっと理解できない内容の本だろう。突き出したDVDには目もくれないので拗ねたように唇を突き出して手を下ろす。

「今回は前よりも良さそうなDVDを借りてきたんだよ」
「……」

え、無視?無視なの?
この間元就くんが好きそうだと思って借りてきた『日輪に吼えろ!』というDVDをみせたところ、「日輪に吼えるだと!無礼な奴め!」とDVDを叩き割ろうとしたので、今度は失礼にならなそうなやつをTATSUYAから借りてきたのに。失礼なのはお前だ乙女ゴコロのわからないやつめ。

「わたしは元就くんといちゃらぶしたいのです」
「黙れ我は忙しい」
「じゃあこの間一緒に観に行ったわたしが120点をつけた映画を観ましょう!」
「我は40点をつけた」
「そんな元就くんが40点!」

そう怒鳴りつけて毛布を奪い返せば、あろうことか奴はわたしの頭をぐーで殴りやがった。またわたしの脳細胞が減った。元就くんっていつもわたしを馬鹿だ阿呆だって言ってるけど、半分は元就くんのせいなんだからね!

「元就くん、そうやって本ばかり読んでるから眉間に皺ができるんですよ」
「貴様はそうやって下らんものばかりを見ているからだらしない顔になるのだ」

…そうだ、口で元就くんに適うはずがない。だったら力だ!
わたしは元就くんの本を力ずくで奪い取ってせいやあと叩き割り呆然としている元就くんの首根っこを掴み片手で振り回しながらDVDをセッティング…というプランを考えたが即座に却下、結局は元就くんを睨むだけに終わる。

「せっかく一緒に生活し始めたのに、元就くん本ばっかり!一緒に暮らす意味ないじゃないか元就くんのばかやろう!」

もうこんな家出て行ってやると毛布を投げ捨てながら言い捨て部屋を出ようと歩き出せば、突然ソファから突き出された足に為す術もなく無様に顔面から突っ込んでいった。あちこちが痛む。こんなのはあんまりだ。

涙目できっと下から睨みつければ、何故か手を差し出してきたので意味がわからず目をまんまるくすると、チッと舌を打って思いっきり引き上げられた。いや、元々あなたのせいで転んだんだよ。それなのに何故わたしが舌打ちされなきゃいけないんだと理不尽さを噛み締め痛む鼻を押さえながら再び元就くんを睨みつければ、元就くんはため息を吐いた。ふざけるなため息を吐きたいのはこっちだ。悔しくて涙が出そうになったので見られまいと慌てて俯く。

「仕方あるまい、そのDVDとやらを観てやる。……だから行くな」

最後にぽつりと言われた言葉にはっとして顔を上げると、真っ赤な元就くんと目が合った。小さく頷けば、ふんと鼻を鳴らしつつも涙を拭ってくれた。その手はひんやりと冷たいけどやさしい。たったそれだけのことで機嫌が直ってしまう自分の単純さには呆れるが、悪い気はしなかった。ただ、引き止めるなら他に方法があっただろうとは思う。手を引いて引き止めるとかあるじゃないか、足を引っ掛けるってどういうことだ。

「ふん、さっさと準備をしろ」

すっかりいつもの調子の戻った元就くんにため息を吐きつつDVDをセットした。

毛布と映画

手のひらを太陽にを陽気に歌い出すお兄さんとお姉さんが映った瞬間、貴様は我を馬鹿にしているのかと思いきり怒鳴られた。それでもソファで一緒に毛布にくるまっているのはしあわせなので、またDVDを借りてこようなんて考えた。


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ぐだぐだすぎてアップするか本当に迷いました。そのうち修正したいです。今は修正する気力がない…突然消えるかもです(笑)
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