「あれ?名前ちゃん寝てんの?珍しい」

「おー…御幸、俺こいつ起こしてか」
「はいはい、監督には2人共掃除で遅れるっつっとくよ。疲れてる名前ちゃんの為に」


毎回毎回、人の彼女に馴れ馴れしい呼び方すんな!って怒んだけど…今日だけは我慢だな。頼むわ、っていうとあいつは片手を上げて教室を出て行った。最近暑いし、やっぱりこいつも疲れてるよな。マネさん達の仕事、かなりあるし。頭をゆっくり撫でるけど、起きる気配はない。何時もなら絶対に授業中寝ないのに、6限の半分が過ぎた頃には机に平伏してた。だから今日はこいつが寝た後のノートは全部書き写して、先生の話も聞いた。後で説明してやれるように。これぐらいしか俺にはしてやれない。デートに連れて行けるわけでもねーし、こまめに連絡を取ってもやれねー。なのに、文句も言わずいつも笑顔で応援してくれるむちゃくちゃ可愛い彼女に俺がしてやれる事なんて、殆どねーから…


「…んっ……」

「名前?」


彼女から声が漏れて起きたのかと顔を覗き込んで見たが、整った寝息が聞こえてくるだけ。俺も机へと突っ伏しながら寝顔を見つめる。これで起きたらこいつめちゃくちゃ怒りそう。な、何で見てんの!馬鹿!とかって顔真っ赤にして怒るんだろう。にしても、寝顔幼いな…クソッ可愛い…。早くこいつの寝顔見られる様な関係になりてーんだけどな。何せこいつは恥ずかしがり屋、いや…恥ずかしがり屋なんて次元超えてるかもしれない。…あーやべっ…こんな体勢で居てたら変な気分になりそう。頭を撫でながら髪に唇を押し付けると、甘い香りが鼻をくすぐる。マネジをやってるこいつがフレグランスなんか付けるわけがない、優しい名前ピッタリのこの香りは名前が使ってるシャンプーの香り。シャンプーの香りって…男心くすぐる香り、だと俺は思う…。気が付くと俺はこの香りに誘われる様に唇を塞いでいた。近距離になればなる程に香る甘い匂い…このまま離さなければこいつが起きるの分かっておきながらも、離す事が出来ない俺は…酔ったのかもしれない、この癖になる甘い香りに。


「…んっ…?!よ…んぅ…」

ゆっくりと瞼を開いた名前は驚いて起き上がろうとするけど、頭を押さえてるから逃げらんねーよ。ぷるぷる震えてるこいつが可愛くてたまんねー。啄む様に何度も角度を変えながらキスをしたら抵抗する事を諦めたのか、力が抜けたのか、大人しくなった。離れる時にチュッと音を立てて離すと、顔を真っ赤にした彼女がこっちを睨んでいた。


「ね…」

「ね?」

「寝込み襲うなんて…洋一の変態!」

「…寝込みって…別に夜這いしたわけでもねーだろ」

「よばっ?!」


俺の言葉に更に顔を真っ赤にさせて俯いた名前の顔を覗き込むと、サッと反対方向を向かれた。一々反応するからからかわれるんだって、いい加減学べば良いと思うんだけどな…。


「名前が起きた事だし、部活行くぞ。ほら、立て」

「部活?!…いたっ…え、何…このノート…」


名前の頭に叩くようにして置いたノートに名前が触れて、ノートを捲る。俺とノートを交互に見ながら驚いた顔をしてる名前にバーカ、と唇を塞いだ。


「ヒャハ、何ボーッとしてんだよ。置いてくぞ」

「ちょっ、待っ」


俺の後を急いで追い掛けて来た名前がシャツの裾を掴んで、ありがとう…なんて恥ずかしそうに言うから、やっぱりまた唇を塞いでしまった。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -