高校の時から付き合ってたから、もう何年だ…7年か。そう考えるとやっぱり長いな、と思う。自分の身なりを整える。受付は俺の方はナベと、しゃーなし御幸、あいつの方は夏川と梅本だっけ。高校時代の野球部の繋がりが強く、こうやって今でも繋がってるんだから、すげぇなあと改めて思う。招待状を出した人々からはおめでとうだったり、やっとか、とかそういう感じの言葉だったりをもらったのもいい思い出だと感じる。柄にもなく自分が緊張していると感じ、さらに動きが硬くなる。もっと笑って、笑顔で迎えたいのに、顔が強張るような、そんな気がした。パン、と軽く自分の両頬を叩き、気合を入れる。ガチャリと隣の部屋のドアを開けると、最初は真っ白だった視界が、少しずつその人を映しだした。
「洋ちゃん」
「おぉ、準備できたか」
「うん!もうばっちりだよ!」
目の前でそう、はしゃぐ彼女を見て、先程まで緊張していたのが少しほぐれた気がした。
「洋ちゃんも、準備ばっちりだね」
かっこいい、なんて彼女が嬉しそうな顔で言うもんだから、照れてしまった。
「ヒャハ、あたりめーだ」
緊張しているのがバレないよう、笑ったつもりだったけど、7年も一緒にいると流石にバレるらしい。無理して笑わないで、なんて心配されてしまった。
「洋ちゃん、」
「…どうした?」
「あたし、幸せだよ」
彼女はそう言うと、ふわりと笑った。顔に出ていたのだろうか。ずっと付き合ってきて、不安にさせた時もあるし、喧嘩だって何回もした。笑った顔や泣いた顔、怒った顔や寂しそうな顔、この7年間で幾度となく見てきた様々なこいつの表情を思い返した。
「今まで洋ちゃんにはいっぱい迷惑かけちゃったし、これからもかけることになると思う」
「それは、俺も同じだ」
「洋ちゃんにプロポーズされた時は本当にあたし、嬉しかったよ」
髪の毛をセットされ、真っ白なウェディングドレスに身を包んだ彼女の、白かった頬がほんのりと赤くなる。反射的にこちらも顔に熱が集まった。
「名前」
「なぁに?」
「ありがとう、な」
「どうしたの、急に」
「…なんとなく」
何よそれ、と彼女は笑うけれど、俺はいたって真面目で、本当にこいつは俺で良いのだろうかとか、こいつを幸せにしてやれるんだろうかとかいろいろ考えてしまう。
「ねぇ洋ちゃん」
「ん、」
「あたしは、洋ちゃんだから良いんだよ。だって洋ちゃんはいつだってあたしを幸せな気持ちで満たしてくれるんだもん。」
また、ふわりと笑う名前を見て、不安なんて一気になくなって、ドレスを着ていることなんて忘れてきつく、抱きしめていた。
幸せにしてくれるんでしょ?
俺だってこいつに、いつも幸せな気持ちにさせてもらってる。