眠い。午後の授業中は基本的にそんなことがぐるぐる頭の中を回っている。でも、居眠りして、万が一それが監督の耳になんか入ったらきっと怒られる。だから、寝ないようにと必死に授業に集中しようと努力する。
でも、監督に怒られるなんて考えてたら、今度は頭の中は部活のことでいっぱいになった。大好きな仲間たちに会えるのは楽しみだし、もちろん仕事も楽しみ。けど、一番は…あの人に会えること。別に彼のために部活に入ったわけではないし、仕事中は公私混同なんてしちゃいけないけど、やっぱり姿を見ることが出来るのは嬉しいのだ。一つ上の学年で、学校にいても中々会うことが出来ないから。

今も投球の組み立てやら相手チームの分析やらを考えているであろう彼に想いを馳せていたら、
いつのまにか本日最後の授業は終了していた。そのあとすぐの掃除もこなし、HRが終わると同時に荷物の仕度をして教室を飛び出す。


「あれ、名前ちゃん」
「御幸先輩っ!」


階段のところで、ずっと私の頭の中を支配していた彼、御幸先輩に会った。嬉しくて飛びつくとちゃんと受け止めてくれる。そのまま抱きついていたかったけれど、部活に行こうと急ぐ人や帰路に着く人たちでごった返していた階段でそれは難しかったから、大人しく手を離して人の波に流されるがままに下り始めた。もちろん、私たちの手はしっかりと絡まっている。幾度となく経験したことなのに、今日はいつも以上に嬉しくて顔がにやけてしまう。それを御幸先輩は見逃さなかったみたい。


「名前ちゃん、そんなに俺が恋しかった?」
「はいっ、すごく会いたかったです…」
「へぇ。なんだ、今日はやけに素直じゃねーか。なんかあったのか?」
「いいえ、何も」


女の子は気まぐれなんです!と笑うと、御幸先輩は一緒キョトンとしたけど、すぐにニヤリと口角を上げた。


「いつもそのくらいかわいいこと言ってくれたらなぁ」
「ははっ、冗談。かわいいよ」


少し頬をぷくっと膨らませて問うと、無邪気に笑いながら私のそれを両側から弱く挟んで押す先輩。その指の動作に従って貯めていた空気を小さく抜くと、2人で顔を見合わせて微笑む。
他愛のない話をしていると下駄箱に着いて、名残惜しかったけど繋がれた手を離した。サッと靴を履き替えて外に出ると、
御幸先輩が待っててくれていてまた手が絡み合い、グラウンドへ向かう。


「今日もよろしくな、マネージャー」
「はいっ!」


ここからは選手とマネージャー。恋人同士に戻るのは部活が終わったら。どちらの関係も大好きだ。だから、午後の時間は部活のことばかり考えてしまう。でも、それも好き。好きだらけの充実した毎日、私は幸せ者だ。
清々しい気持ちで見上げた空は、吸い込まれそうなほどの青空。そして、この時間特有の心地良い風が頬を撫でる。あぁ、今日も部活日和だ。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -