今日は待ちに待った立海大遠足の日。遠足って言ってもみんなで遊園地とか公園とかに行くんじゃなくて、学年全体で大体1グループに30人くらいのグループを作ってからみんなで話し合って、自分達で遠足先に連絡を取ってから向かう、っていうちょっと他とは違うとくべつな遠足。 玄関で普段履いてるローファーじゃなくて歩きやすい運動靴に足を入れ、荷物の入ったリュックを背負う。よしっ!と声をあげた私はそれより更に大きな声で行ってきますと家族に挨拶をした。 天気は雲一つない快晴。まさに遠足日和とはこのこと!とニコニコしながら歩いている私は周りからみたらたぶんかなり変な子だったかもしれない。それでも楽しみにしていた遠足の喜びを我慢するなんて器用なこと私が出来るはずもなく、流石にスキップをしたときは自分でも気持ち悪いと思ったけど笑顔は抑え切れなかった。 「おはよう、やはり寝坊はしなかったか」 「寝坊するわけないよ!!あ、おはよー」 立海の校門の前が集合場所。集合時間の5分前に到着した私は周りには遅刻魔という認識があるらしく驚愕の視線を送られたのでどや顔で返しておいた。 「なにそのどや顔、むかつくね」 「すみません調子に乗りました」 魔王幸村精市には敵わなかった。 ちなみにお馴染み幸村くんとやなぎくんは私とおんなじグループなのです。冒頭の台詞はやなぎくん。そして何故かあの鬼の風紀委員長である真田くんもいます。うわぁぁぁーめんどくさぁぁぁー。おっとつい本音が。 そんなこんなでぐだぐだ無駄話でもしていると集合時間になったらしく、真田くんがあの馬鹿でかい声で点呼を取っていた。うるさいと幸村くんに一蹴されたのは言うまでもありません。 メンバーが揃っているのを確認すると、目的地に向けてぞろぞろと列を成して歩いていく。なんだか蟻みたいだと思っているとふと思い浮かんだ疑問。何気に大事なことだと気付いた私は近くにいたやなぎくんにお尋ねした。 「ねぇねぇやなぎくん」 「なんだ」 「私たちの遠足ってどこに行くの?」 台詞を口にした途端、私の近くにいたメンバーは信じられないといった視線を一斉に送ってきたもんだからちょっと恐怖感を抱きつつもどや顔で返しておいた。後ろを歩いていた幸村くんに頭を殴られた。いたい。 「頭が割れる……!!」 「大袈裟だなぁ」 くすくす笑う幸村くんの頭には悪魔の角が生えているようにみえた。誰かもぎ取ってください。 頭の痛みに一瞬忘れてしまったが結局のところどこに行くのだろうか。うーんと考えていると後ろの真田くんからたぶん私に向けてであろうカツが飛んで来た。 「貴様、話し合いのとき何をしていたのだ!」 「うぎゃ!は、話し合い?やなぎくんそんなのあったっけ?」 「ちゃんとあったぞ。ただお前は睡眠学習していたようだったがな」 「睡眠学習…!私すごいねー」 「たわけが!!褒められたことではない!居眠りなどたるんどる!!!」 「うるさいよ、真田」 はい、幸村くんによるブリザードいただきましたー。 凍り付いたその場により、この話題は終了。結局のところ遠足先は不明のままである。私の疑問は到着するまでわからないようです。まあそれはそれで楽しいかもしれないと踏んだ私は鼻歌を挟みつつポケットの飴ちゃんを口に含んだ。モモ味は最高だね。後ろの飴がどうちゃらとかうるさい真田くんは幸村くんが沈めてくれたのでお礼にと幸村くんにはブドウ味をあげた。やなぎくんにはマスカット。ついでに真田くんにはイチゴ味。 「俺はいらん!」 「ひ、ひどい真田くん…私の好意を無下にするなんて!」 「それは頂けませんね、真田くん。受け取って差し上げましょう」 「えっ、どなた?」 真田くんの後ろにいたと思われる人物さんは眼鏡をぴしゃーんと反射させながら中学生にしては低い声で名前を告げた。なるほど、やぎゅーひろしというらしいです。漢字わかりません。 というよりよく自分の周りを見渡してみると何故か男ばっかりなことに気付く。あ、あれー?私たぶん学年全員で集まって決めたグループ決めのとき寝てたと思うから誰が一緒なのかとか全然わからない。それでも遠足だけは楽しみにしていた私。自分でもよく日付を間違わなかったと思う。まあ私の位置が前のほうだから後ろのほうに女の子くらいいるだろう。口の中で転がしていたモモ味の飴がぱきんと音を立てて砕けた。 「着いたぞ」 真田くんの低い声に(てかみんな声低い)いつの間に着いたのだろうかと顔を上げた先には―― 「あれ、学校?」 「ああ、氷帝学園だ」 かなーり大きな学校がありました。 遠足なのに学校へ遠足っておかしいとおもいまーす。なんて思ったけれど、そのひょーてーとやらの馬鹿でかさに声なんか出なかった。いや、うちもそれなりにでっかいけどね。なんかね、しょーがないようん。 案内人らしき人(変な眼鏡かけた関西弁の人だった)について校内に入り、そのきらびやかさに阿保みたいにキョロキョロしていたらやなぎくんから頭を叩かれた。ちょっと痛かった。それとキョロキョロしたときに気付いたことが一つ。 私のグループ、女の子がいない。 あ、あれぇぇぇぇー。おっかしいよねぇぇー。後ろにいる人もまさかの男ばかりでした。というかよく考えてみると集合場所だった校門に女の子はいなかった気がする。遠足が楽しみ過ぎて気付かなかった私のバカ。それに加えて校内を歩いて行く先に見えるテニスコート。ちらりとお隣りのやなぎくんを見るとテニスバック。後ろにいる幸村くんと真田くんと柳生くん(漢字教えてもらった)もテニスバック。よし、気のせいだろう。私の予感は当たらないし。なんて思っていたらこれまたでかい部室に案内された。気のせいだ。きっと部室のでかさを自慢したいだけなんだろう。うんうんきっとそうだ。一つの部屋に入ったと思ったらみんな荷物を下ろしたから私もそれに合わせてリュックを下ろしていると前にいた銀髪の誰かさんが急に制服を脱ぎ出したもんだから私は慌ててやなぎくんのもとへ駆けて行った。 「ややややなぎくん露出狂が!!!」 「露出狂だと?」 「ぎゃぁぁっ!なに脱いでんのさ真田くんのバカ!!」 「馬鹿だと!?それよりとっとと出ていかんか!!」 「うわぁぁひどい!仲間外れにする気だこの人!!」 「とりあえず落ち着け」 「それより着替えるからちょっとの間くらい早く出ていきなよ」 みんなお馴染み幸村くんのブリザードにより凍り付いた私の頭は冷静な状態でやや広い悪夢のような部屋から脱出した。冷静になった私の頭でちょっと考えてみる。着替えって、どういうことだ。着替えて何をする気なんだ一体。着ぐるみでも着てお遊戯の発表会でもするのだろうか。それだったら私練習してないからヘマする気がする。うんうん唸って考えているとふと上から振り落とされた声に反応し顔をあげる。真っ赤な髪をした女の子が疑い深い表情で私を見ていた。 「お前、誰?」 お、思ったより声が低かった!そんなことに驚きつつもなんだか久々にみた気がする女の子に気が緩んだ私は私より身長のある可愛い女の子に思わず抱き着いてしまった。 「う、うわ!なんだお前!!離せ!!」 「うわぁぁん!!」 「ちょ、なに泣いてんだよ!!」 「久々の女の子だぁぁぁっ!!」 「おまっ、だれがっ…」 がちゃり、途端開いたその扉により赤髪の女の子の台詞は途切れてしまった。私はというとぐすぐす鼻を鳴らしながら未だ女の子とハグ。ぎゅううっと力を込めていると上から聞き慣れた声が降りる。 「お前達はなにをしているんだ」 少し怒っているような声の持ち主はやなぎくんで、なんで怒っているのかもわからない私はちょっと怖くなって女の子に抱き着く力を強めた。慌てたような声を上げる女の子は無視の方向でお願いします。 「あれー?向日ったら女の子に襲われてるCー」 ちょっと間延びした高い声の先にはまた女の子。これまた金髪をふわふわさせてちょっと眠たそうな女の子ですっごい可愛かった。ハグしに行こうかと思った矢先、ぐいっと腕を痛いくらいに取られた。 「なんだこの女は」 なんだこの泣きボクロは。 「跡部か、今日は世話になる」 「柳か。幸村はどうした?」 「まだ中にいる。この馬鹿がすまないな」 「バカとはなんだぁぁ!というか腕痛い!二の腕掴むなぁぁぁー!!」 私の話を全く聞いてくれない二人に怒りを覚えつつも赤髪の女の子を見ると真っ赤な顔で私を睨んでいた。スキンシップがいけなかったのだろうか。途端申し訳なくなった私は眉を寄せて謝った。 「…クソクソ、俺は男だっつの」 「………男…だと…!!?」 どうやら女の子だと思っていた赤髪の人は男だったらしい。えっ、それってすっごい失礼じゃないか私。ということはもしかして、金髪の人も、 「向日女の子みたいだからしかたなE〜」 「お前だって人のこと言えないだろーが!」 「A〜、そんなことないCー」 会話の内容からすれば金髪の人も男らしい。人って見かけに寄らない。というか見ず知らずの男に抱き着くなんてどういうことだ私。だからやなぎくんも怒っていたのか。一人納得した私は私の腕を未だ掴んでいる全く知らない泣きボクロの人をみた。 「ちょっと離してくれませんか」 「はっ、痴女が」 「ちっ……!!?」 超失礼だこの人!!!初対面でこんなこと言われたのは初めてだ!!!慌ててやなぎくんに視線を移すと少し笑っていた。この人も失礼だ!! 「だ、誰が痴女だぁぁっ!!!」 「いっ……!」 足を後ろに引いて、そのムカつくくらい長い足の弁慶の泣き所と呼ばれるその場所に向かって運動靴で思いきり蹴り上げた。ざまぁ! 「この女…!!」 「けっ!!てかやなぎくんよく見たらジャージ姿!」 「運動するからな」 なるほど、用意周到なわけですね。 「ところで何の運動ですか?」 「…あーん?柳、こいつまさか何も知らねぇのか?」 「そのまさかだ、跡部」 あれー。私の質問はー? こうもスルーされ続けていると流石に落ち込んでくる。真っ白なその床に体操座りしていると先程の女顔な男の子二人組が私に近寄ってきた。 「なぁなぁ、お前変な奴だな」 「変な奴だ〜」 なんて失礼な二人組だ。まあこの二人に対しては私も失礼なことをしてしまったから仕方ない。でもちょっとはムカついてしまった私じとーとした視線を二人に送っておいた。 そんなぐだぐだした会話と言えるかわからないものを続けていると、準備が出来たらしい幸村くん達が登場した。何故かみんなジャージを着ている。そんなに運動するのだろうか。私はもちろんジャージなんか持ってきてない。 「待たせたね、跡部」 それより先程から嫌な予感がどんどん膨らんでいく気がする。気のせいであってほしい。 「それじゃあ、始めようか」 何故かみんなお揃いのジャージに見覚えがある気がするんだ。 うっそだよねー。だって遠足だもの。 「立海と氷帝の練習試合を」 こんな遠足アリですか。 てくてく (やだ私寝る) (なかなか面白いぞ?) (私の遊園地ー!公園ー!!) (居眠りをしたお前が悪い) ―――――― 大変長くなってしまった上グダグダで申し訳ないです…!!文字数ギリギリです。こんな長い短編書いたのは今までで初めてなものですから本当にグダグダ感が否めく申し訳ないです。オチひどい! ではリクエストありがとうございました!! |