強気でサバサバしてて、ある程度仲良しなお友達が何人か。まあ普通なんだけど、 一人を除いて。 「やあなまえ」 「……いっつもどこから沸いてくんのさ」 「沸く?なまえの頭が?」 「誰の頭が沸くかぁっ!!」 抜群の運動神経に白百合を思わせる儚げな容姿のテニス部の部長様。陸上部二年エースの私とは殆ど関わりのないはずの彼なのに何故か彼はこうして毎日のように私のクラスへ花の香りを漂わせながら訪れるのだった。 「つーか幸村さん部長の集まりじゃなかったんですか」 「ああ、あれね」 今日は月に一度ある部長会議だったはず。内容によっては昼休みだけでは足りないほどの会議の長さにうちの美人な部長がよく愚痴を漏らしていたのを思い出す。…まさかサボったりなんてしてない、よね。 「終わったよ?」 「………は?」 「だから終わったって」 ……………嘘つけ!!! 私は騙されない。ニコニコとしているその笑顔の裏には真っ黒なダークマターたるものが潜んでいるのはもうわかっているんだ!!あの会議が終わったわけがない。つまりは―― 「無理矢理終わらせて来たんでしょーがぁぁっ!!!」 「あはっ。なまえに早く会いたくてさ」 何が、あはっだぁぁぁっ!!かわいいことしたからって許されるわけないんだからな!!顔赤い女の子がいっぱいいたとしても私は騙されないんだからな!!!あとで部長の愚痴を聞かなきゃいけない私の身にもなってくれ!! 握る拳は怒りに揺れ、額に浮かぶ血管は今にもブチ切れそうだ。ただでさえ私は高血圧だというのに倒れたらどうしてくれるこの野郎。 「ほらほら、そんな変顔晒してないで早くご飯行くよ」 「はい!!?第一私は他に約束が…」 「約束?」 ぴしり。私の台詞に被せると同時に途端幸村さんから放たれたブリザードによって私の動きは凍ったように止まった。 先程の花のような笑顔はどこへやら。黒百合だ。黒さが隠しきれないまま滲み出ている。周りのクラスメイトも命の危険を感じたのか私と幸村さんの半径3メートル以内には誰もいない。もはやここは幸村さんのテリトリーだ。そして私はそのテリトリーに入ってしまった獲物。冷や汗がつたりと頬と背中を伝った。 「誰?」 「……だ、だれって」 「俺よりそいつ優先するんだろ?知る権利くらいあるだろ」 「…………」 何と言う横暴さ。お前はジャイアンかと叫びたくなったが流石にこの空気じゃそれは不可能なことだった。そんなこと言ったら締め上げられる。ひゅう、と息が喉に詰まるのを感じ慌てて大きく息を吸い込んだ。 「で、誰なわけ」 「……部活一緒の女の子の友達ですよ」 「本当に?」 「ほ、ほんとですよ!」 嘘は全く言ってない。ちなみに約束していた当の本人は私から5メートルは離れているだろう安全地帯と思われる位置から笑顔で手を振っている。ついでに口パクで「いってらっしゃい」ですって。苦笑いを返しておきました。 「…はあ、ほら幸村さん。私お腹空いてるんだから早く行きましょー」 「今日は中庭の花壇の前だよ」 さっきまでの恐ろしいほどのブリザードはどこへやら。私に手を引かれる幸村さんからはかわいらしいお花がふわふわと浮かんでいた。 そんな幸村さんのお弁当は、自作されたフラワーさんのキャラ弁だった。(あのヒゲと帽子のマークが有名な土管職人のキャラクター)それも流石運動部、サイズがでかい。 得意げに見せてくる彼の姿がかわいいなんて思ってしまったけどそれを口に出してしまったら彼は調子に乗り出すのでしっかりと結んで私の不格好なタコだから宇宙人だかわからないウインナーを口に運んだ。この雰囲気が心地よく感じつつある感情は胸の底にしまっておいた。 黒白フラワー (なにそれ、豚?) (……ウサちゃんりんごだよ!) ―――――― 強気かどうかイマイチなところで申し訳ないです…。 煮るなり焼くなり捨てるなりどうぞ! リクエストありがとうございました! |