「オラァ!近寄んなや!!」
「こ、こはるぅぅ〜〜!!」

(あ、またフラれた)

ここ、大阪四天宝寺ではよくある光景にニコニコと頬を緩ませて眺めているとその片割れが私に視線を合わせその鋭い眼光をさらに尖らせてくる。それを合図に私はファイティングポーズをとった。

「何見てんねやぁぁおんどれぇぇぇっ!!」
「うっさいわフラれた男がぎゃあぎゃあと!!!」
「なんやとゴルァ!!」
「やんのかゴルァ!!」

がちんっと頭と頭がぶつけ合う。少し高い位置にある頭が憎くて憎くて仕方がないのはこの瞬間だ。背伸びをしている足がプルプルと悲鳴をあげているのをごまかすように鋭い瞳に向けてキッと睨みつけた。

「第一小春ちゃんは残念ながら私のやからな!!」
「はぁぁ!!?何言うとんねんこの単細胞が!」
「単細胞はおのれじゃボケェ!!」
「なんやとぉぉぉ!!?」

売られた喧嘩は買う、これモットー!
一氏ユウジ。こいつは何故かいつも私に喧嘩を売ってくる。まあ愛しの小春のライバルなのだからしょうがないのかもしれないが、

「はんっ!小春ちゃんの幼なじみである私に勝とうなんざ10年遅いわ!」
「そ、それは小春が幼稚園の頃のっ!」
「ふっ…プレミアつくで?」
「うぐぐぐぐっ!」

どこから出したかわからないハンカチを噛みながら悔しがる一氏に私は勝ち誇った笑みを浮かべた。どんなに頑張ろうが時間というものはどうしようもならないのだ。
ふふんっと偉そうに鼻を鳴らしていると背後から地を這うような低い声が聞こえてきた。ものごっつやな予感がすんねんけど。後ろ向きたない。
だがしかし、思っていることとは裏腹に向きたくない筈なのに身体が勝手に動き機械のような固い動きで首を回した。

「なまえちゃん?それ、どないしたん?」

悪魔が降臨なさった。

「ひひひひ一氏!!呼ばれとるで!!」
「なんでやねん!お前の名前呼ばれとるやないかい!!」
「私はなまえという名前じゃない!」
「むちゃくちゃやなお前!!」

「なまえちゃん?」

にーっこり。
いつもなら天使のその笑みが大層恐ろしく思えるのは気のせいなわけがない。命の危機を感じる。
普段はこんなことするはずがないのに小春ちゃんのあまりの恐ろしさに一氏と肩を寄せ合い抱き合った。あっ!こいつ胸触りやがった!

「変態一氏ー!!」
「はっ!?ちょ、ええっ!!?」
「小春ちゃーん!一氏が私の胸触ったー!」
「おまっ!!事故やろ事故!!」
「うわーん!」

さっきの話はどこへやら。事故をいいことに私は悪魔化していたはずの小春ちゃんに抱き着いて小春ちゃんから見られないように一氏に向かってニヤリと笑みを浮かべた。

「!!!おまっ、謀ったな!」
「うわーん小春ちゃーん!!」

「何なまえちゃん泣かしとんじゃ一氏ゴルァ!!!」

なにこれこわい。
悪魔、鬼、とにかく恐ろしいものと化した小春ちゃんを横目で見つつ、怯える一氏もちょっとだけ可愛いなーなんて思ってみたりした。
こんな日常が楽しいのです。



こんな青い春
(こ、小春、怒った顔も可愛いけどめっちゃ怖い……)
(まあ頑張りたまえー)


――――――
な、なんだか物凄い申し訳ないものになっちゃいました。もろギャグです。しかもユウジ要素すっくない!
こんなんでよかったらもう捨てるなりなんなりしてやってください…!!
リクエストありがとうございました!


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