▽5

6がつ2にち
えんそく。マダラくんとおなじはんだった。おうちもちかいし、はんもおなじ。おかあさんにいったら、よかったわねってわらった。

6がつ7にち
にっちょく。■■■ちゃんとともだちになった。あとでおうちにあそびにいくやくそくをした。

7がつ20にち
マダラくんといっしょにかえった。イズナくんもいっしょだった。かえりにたんぽぽをつんだ。マダラくんが、にあわないとわらった。

12がつ10にち
つうがくろに氷がはった。3人でふんでわりながら学校に行った。寒かった。


▽6

4月19日
小学生の時に書いた日記を見つけたので、6年ぶりに書く。慣れない制服を着て、中学に行くようになった。マダラくんと同じクラスだった。お互いの制服姿が似合わないと、笑いながら学校に向かった。

12月24日
今日はマダラくんの誕生日だったので、弟のイズナくんと選んだプレゼントを渡した。なんだかばつが悪そうな顔をしていた。迷惑だったかな。そういえば、最近全然話してない。

3月10日
気まぐれに日記をつけていると、昔書いたものを読み返してほんの少し、寂しくなる。


▽7

5月6日
高校に入ったばかりなのに、進路と勉強の話ばかりだ。考えてはみても、なりたいものも何も見つからない。

6月6日
友人の■■■が告白されたとはにかみながら相談してきた。隣のクラスの男子らしい。

6月9日
■■■は付き合うことに決めたそうだ。一緒に帰ることが減るが、彼女が幸せそうなら仕方ない。

7月29日
久しぶりにマダラくんを見かけた。近所で同じ高校なのに、クラスが違うと全然話せない。でも、挨拶すると返してくれた。良かった。

12月1日
漠然とした不安がある。進路も友人関係も、私はうまくこなせない。そんな気がした。

4月6日
模試の結果が良くない。担任の渋った顔が、少し辛かった。遊んでたわけじゃない。勉強してた。ただ、何をどうしたら良いのかわからない。勉強してれば、せめて次には繋げるはずだ。

7月30日
期末テストの結果が良くなかった。母さんも父さんも、進学は無理かと残念そうな顔をしていた。失望された。そう思った。

12月30日
出来の悪い娘でごめんなさい

2月8日
久しぶりに■■■とゆっくり話をした。彼氏とはうまく言ってるらしい。進学も、このままの成績なら問題ないそうだ。幸せそうだった。
幸せって、何なんだろう。

4月3日
今日は久しぶりにイズナくんと話した。マダラくんは、もう進路を決めているらしい。私は就職することにした。
誰にも期待されてない気がした。それは寂しかった。

9月28日
マダラくんと会った。もう、大学には合格したらしい。私は、なかなか決まらない。そう言うと、焦るなと励ましてくれた。

12月
やっと就職が決まった。ゴルフ場の受付に決まった。うまくやっていけるだろうか。

7月1日
辞めたい。

9月28日
私に社交性がないのかもしれない。失敗ばかりしている。迷惑をかけている。胃が痛い。気持ち悪い。仕事行きたくない。

10月30日
仕事先で貧血を起こして倒れた。母に迷惑をかけてしまった。私はやはりダメだ。ダメだ。

1月15日
今日で仕事を辞めた。早く次の仕事を探さないと。

3月2日
覚悟はしていたが、仕事が全然見付からない。どこで面接を受けても落とされる。親戚の目が怖い。ごめんなさい。

6月17日
久しぶりに会った■■■の紹介で、新しい仕事に就くことができた。今回は携帯電話の販売店だ。頑張りたい。

8月15日
最近、何をやってもうまくできない。家に帰っても、何もせずに寝てしまう。食事を疎かにしてるせいか、少し痩せた。母さんが心配をしている。

12月24日
街でマダラくんを見かけた。隣を歩いていた女性は、恋人だろうか。綺麗な人だった。そういえば、今日はマダラくんの誕生日だ。私にはもう、関係ないのかもしれない。

3月26日
仕事先で出会った人と、付き合うことになった。もう、いい加減彼を忘れるべきなのだ。今だから言える。ずっと彼を好きだった。未練がましい片思いだった。

5月
要領が悪いと言われた。仕事がうまくいかない。どんどん、ダメなところが目立つようになっていく。周りには迷惑をかけている。ここにいてはいけない気がした。

7月31日
体調不良で仕事を休んだ。吐き気が止まらない。


▽8

9月20日
日付だけ見ると2ヶ月だが、実際には5年ぶりに書く。仕事も落ち着き、3ヶ月には結婚式を控えている。彼は優しい人だ。こんな詰まらない女を妻にしてくれるらしい。それは幸せなことなのだろう。でも、幸せとは何なのだろう。
彼といるのは楽しい。
楽しいが、すぐそばに不安がある。
私は嫌われるというリスクがある。彼に厭きられるというリスクがある。私みたいな人間に、何故彼のような優しい人が。

11月3日
毎日が何故か作り物のように思えた。彼は私のためにたくさんのものをくれる。だけど私が与えられるものがない。ごめんなさい。オビト。

11月18日
体調不良が続き、オビトの勧めで病院に行った。食道が爛れているのだそうだ。薬をもらい、しばらく様子を見ることになった。仕事も、少しの間休むことになった。

11月22日
病院から帰って、仕事を休み始めてから、1歩も外に出ていない。出たくない。出ると、周りから責めるような目で見られる気がした。ダメなやつだと、つまらない人間だと。怖い。気持ち悪い。その一方で雑踏の中で溶けていくような夢を見た。たくさんの人の波の中で、肉が溶け落ちで霧散する。私が消える。消える。

11月
久しぶりに外にでたくなった。近くのコンビニに向かった。オビトがついてきてくれると言ったが、断った。ひとりになりたかった。カフェオレを2つ買った。帰りに雨が降っていた。傘を忘れた。ずぶ濡れになりながら帰路を辿る。

途中で、マダラくんを見た。

私は彼を見た。彼と、目があった気がした。
怖くなった。
こんなみっともない自分見られたくない。嫌われてしまったかもしれない。怖い。
吐き気がした。その場に倒れて吐いた。
そのあとのことは覚えていない。
病院の病室で、オビトがそばにいてくれた。


11月

ごめんなさい。




――日記はそこで終わっていた。


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