さんさんと降り注ぐ太陽、雲一つない青空、傍らには気の合う仲間たち。うん、なんと素晴らしいシチュエーションだろうか。この騒音さえなければ。


「咲ー屋上で日傘広げんのやめろよ」
「だってこんな晴れてんのよ。みすみす紫外線に肌晒せるわけないじゃない」
「じゃあ屋上来んなよ」
「うるさいハチ。咲ちゃんの肌が焼けてもいいってゆうの?」
「俺は小麦色の健康的な肌の方が好きだし」
「残念でしたー!兵助は豆腐みたく色白の女の子が好きなんだもん」
「え、あいつ女にまで豆腐らしさ求めんのかよ」
「そこがいんじゃない!兵助はね、そこら辺の軟弱な野郎共と違って自分の理想を曲げないのよ」
「何でお前が偉そうなんだよ」
「兵助とあたしは一心同体!」
「いや、キモいから」


クラスが一人だけ違って遅れてる兵助と、売店に昼飯を買いに行った三郎を欠いたいつものメンバーで屋上を陣取ってるわけだけど。咲ちゃんとハチが喋ると必ずこんな口論みたくなってしまう。お互いがお互いを認めてるから喧嘩って程じゃないし、心配するようなことでもない。だけど、もうちょっと静かにならないかな。キーキーうるさくて猿山にいるみたいだ。あ、けなしてるわけじゃないよ。猿って可愛いよね。


「ねー雷蔵?」
「えっ、なに?」
「女の子は肌白い方が可愛いよね?」


咲ちゃんのどんぐり眼が僕を見つめてくる。期待の込もったそのきらきらした瞳に耐えられなくて、僕は目を逸らした。


「僕はその子に似合ってれば、どっちでもいいと思うよ」
「何とも雷蔵らしい答え!」
「さっすが仏の雷蔵!」


さっきまでの論争は何処へやら、二人はわいわいと騒ぎ出す。ハチから意味のわからない単語が飛び出したけど無視した。きっと気にしちゃいけないとこだ。苦笑いでごまかそうとしたときに、背中で錆び付いたドアが開く音がした。やっと全員集合らしい。


「おーっす」
「悪い、遅くなった」


焼きそばパンとクリームパンとあんパンと缶コーヒーの入ったビニール袋を提げた三郎と、弁当と水筒を入れた鞄を抱えた兵助が連れたって歩いてくる。三郎は僕と同じ顔をしてるのに、何故か憎らしいことに格好いい。きっと立ち居振る舞いとか、雰囲気がそうさせてるんだろう。反対に兵助はいつ見ても髪はボサボサ、長い前髪で顔は殆ど隠れてる上に、黒縁眼鏡が余計に暗く見せている。中学からの付き合いだから、僕らは兵助が本当は綺麗な顔をしていることを知っている。勿体ないな、と思わないことはないけど、本人に気にする様子がないし、何より兵助には咲ちゃんがいるからモテる必要だってない。だから兵助はずっとこのままでもいいんだ。どんな外見をしていたって、兵助は兵助だから。


「へーすけー!」


咲ちゃんは兵助の姿を認めると、日傘も投げ捨ててその胸に飛び込んだ。隣で腕を広げて待っていた三郎はショックでうなだれている。僕と同じ顔であんなことしないでほしいな、気持ち悪い。


「おい、咲!たまには俺に来てくれてもいいだろう!」
「誰が三郎に抱き着くなんて危険な行為すると思ってんの」
「危険じゃない!ちょっと胸の感触確かめたり、尻を揉んでみたりするだけだ!」
「それが危険でしょ!」
「ふん!咲のない胸揉んでも楽しくないからいいもーん」
「てめっ…言ったな!」
「咲…飯食いたい」


兵助の鶴の一声で咲ちゃんは光の速さで兵助から剥がれ、日傘を持ち直して先程の位置に座った。その横に当然のように兵助が座って、三郎が咲ちゃんの向かいに座ろうとするのを僕が止めた。三郎はたまにコンクリートに臥してスカートの中を覗こうとしたり、食べ物を口に運ぶ咲ちゃんの口許を見つめて一人悦に入ったりするので、実に気持ち悪いのだ。結局咲ちゃんの前にはハチが来て、その横に三郎、僕は咲ちゃんの隣になった。


「では!いっただきまーす」


咲ちゃんの明るい掛け声で昼飯が始まった。兵助の横でにこにことおかずを交換し合っている咲ちゃんは友人の贔屓目なしでも可愛くて、なんだかこちらまで嬉しくなる。


「…俺は咲のおかず貰うよりも咲をオカズにしたい」


隣の変態はとりあえず殴っておいた。

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