※7年後設定



ピンポーン。短いチャイム音の後に、よく聞き知った懐かしい声が三つ、好き勝手にものを言う。相変わらずなその様子にあたしと兵助は思わず顔を見合わせて、自然に笑顔を零した。はやる気持ちを抑えきれずに兵助と連れたって玄関に向かう。オートロックを解除すると、すぐさま飛び込んできた何かがあたしの身体に思い切り抱き着いた。


「咲ー!久しぶり!」
「三郎っ!会いたかったよ」
「もちろん俺もだ!」


三郎はむぎゅーって感じにあたしを抱きしめて、満足そうに表情を崩す。鼻息が荒いのは気のせいだと思いたい。三郎の後ろでは呆れ顔の雷蔵とハチが両手を後ろに隠して立っていた。手を振るとあはは、と渇いた笑いを浮かべてあたしと三郎の背後に視線を送る。後ろ…ってことは必然的に兵助なのだけど。


「三郎、くっつきすぎ」


突然低い声が割って入ったかと思うと、そのまま三郎から引きはがされて兵助の腕の中に閉じ込められた。久しぶりに見せてくれた独占欲に、嬉しさが溢れかえってしまったあたしは兵助に向かい合い頬に唇を寄せた。


「うわー…」
「何だよ!相変わらずいちゃつきやがって、お「黙ろうか三郎」
「すみません!雷蔵様!」


言葉も出ないほど呆れたようなハチに騒ぎ出す三郎を力技で黙らせる雷蔵。変わらないみんな、変わらない笑顔。成人式以来、実に四年振りの全員揃っての再会だった。一瞬静かになったときを見計らって、雷蔵とハチが目配せして隠していた両手を前に出す。雷蔵が抱えてるのは大きな花束、ハチが持ってるのは駅前のケーキ屋の箱。三人はこの上ない笑顔であたしと兵助に言う。


「「「結婚おめでとう!」」」


じわりと目頭が熱くなって、あたしたちは「ありがとう」と返すことすらままならなかった。





「おいこれでいいのか…?」


部屋に入って開口一番にハチは呟いた。そんな彼の目線の先には壁に掛かったレイちゃんのパズルに、萌えアニメの映像が流れ続けるテレビ。しかしリビングにあるのはほんの一部だ。兵助の部屋は以前のアパートよりもっとすごい。1/20シャイニングガンダムとか普通に置いてあるし。ガンダムのDVDを見る専用のホームシアターまである。どこの土田さんだ。


「これ自重してる方だもん」
「マジかよ…」
「結婚してもそっちの趣味はやめないんだな…」
「当たり前だろ?お前らは俺に死ねと言ってるのか?」
「さすがは兵助だね…」


用意しておいた食事をテーブルに移す間にも、話は止むことなく続けられる。四年のブランクなんて感じさせない程滑らかなその会話に、やはりこの四人の絆を改めて確認せざるを得ない。


「準備出来たよー召し上がれ!」
「おぉ!美味そう!」
「いただきます」
「いっぱい食べてね!」
「俺は咲を「鉢屋いい加減にしろよ」
「ちょっ…やめて!目が本気!」
「雷蔵やめろ!三郎を撃つなら俺を撃て!」
「撃つって何だよ撃つって」


握りこぶしを作る雷蔵に、本気で怯える三郎。軽い言動はいつものことで自業自得であるから同情する気も毛頭ない。ハチだけは正義感からか身体を張って三郎を守るのも面白くて、兵助と盛大に笑い飛ばしてあげた。


「みんな変わんないね」
「ああ、そうだな。やっぱりこの五人が一番落ち着くよ」
「…五人、なの?」
「…訂正、咲といるのが一番落ち着く」
「ふふ、ありがと。兵助大好き」
「俺も」
「「リア充うぜえ!」」


二人で見つめ合っているともちろん雷蔵は除く全員からのお叱りを受けた。それでもやっぱり楽しくて嬉しくて時間はあっという間に過ぎてゆく。前に伸びる道はそれぞれ違っていても、一度交差した道は決して消えない。振り返れば、いつだってまた繋がれるのだから。あたしは雷蔵がいて、ハチがいて、三郎がいて、大好きな兵助がいるこの世界を愛している。それだけで、世界の何と素晴らしいことか。


「みんな大好き!」


満面の笑顔がみんなの答えだった。



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