勝利こそが、すべてだった。下位チームのジェミニストームの中でも下っ端なあたしはお父様のお目にかかることすら稀だったけれど、それでも一つの学校を征服する度に、一つのチームを潰す度に、お父様が喜んで下さっているのだと実感できた。負けて追放されたあとだって、あたしは一途にお父様の野望が果たされることを願っていた。それ以外にすることもなかったし。そんなあたしに、レーゼ、基い緑川リュウジは執拗に付き纏っている。お父様以外のことを考えるのは面倒くさい。だからあたしは見えない聞こえない振りを行使するが、緑川にはいまいち通じていないようだ。


「君も分かっているんだろ?過去と決別しなきゃならない。オレもいるから大丈夫だって。オレたちは自由になったんだ。ほら、笑いなよ。人間は幸せなとき笑う生き物なんだ」


いまが幸せだというの?お父様と引き離されたのに。笑えるはずもないから、代わりに緑川の手首を掴んで思い切り抓った。いてて、なんて情けない声。強靭な肉体も、卓越した技術も残されていないただの人間。もうあたしたちは、宇宙人じゃない。


あたたかな死

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