「吹雪くん、辛いなら無理しなくてもいいんだよ」


同じベンチに座って、フィールドを駆け回るみんなを見つめる吹雪くんに、わたしはそっと囁きかける。吹雪くんは唇を悔しそうに噛み締めたまま何にも言わない。わたしも汗を光らせる選手たちを眺めつつ、そのまま続ける。


「DFだって立派な仕事だし、攻撃ばかりがサッカーじゃないし。FWにこだわらなくてもいいでしょう。吹雪くんには吹雪くんにしかない価値があるんだから」


正直、この言葉が吹雪くんに届くなんて微塵も思っていない。何故ならこれは吹雪くん自身の問題で、わたしが口を出したところで解決するものでもない。吹雪くんだってそれを分かっているからこそ、わたしの発言に苛立つ。


「君に何が分かるっていうの」
「何にもわかんないよ。ただ、吹雪くんは笑ってる方が好きだなあ、って思って」


わたしを馬鹿だと嘲笑ってくれていいよ。それで、少しでも君の心を埋められるのなら。


遠い隣人

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -