恋を花に喩えるのは無粋な話ではない。片想いの間にぐんぐん栄養をもらって育ち、やがて両想いになって満開の花が咲く。そのあとは萎んで枯れるだけ。恋に永遠などありはしないのだ。
「で?俺たちは枯れてるって言いたいのか?」
「そこまではないけど…萎れてるかな、って」
土門と付き合い始めてもうすぐ一年。既に当たり前になった存在は、手を繋いでもキスをしてもセックスしてもときめきをもたらしてはくれない。わたしこのまま枯れちゃうんじゃないかなあ。
「んなことねーよ。俺はいつだって満開だぜ」
「頭の中が春だからね」
「てっめ、人がせっかくいいこと言ってんのに」
土門といるのは嫌いじゃない。たまに飛ぶ軽口も好きだし、抱きしめられたとき安心させてくれる腕も好き。そういえば嫌いなところが見つからない。あれ、なんだ。これって盲目ってことじゃないか。ならわたしは、未だにこの人に恋をしているんだね。
枯れない花