「…ごめんなさい」
「………」
「…すみませんでした」
「………」
「…申し訳ありませんでした」
「………」
「…アイムソーリー」
「一回死ぬか?」
「ああもう!なんて謝れば満足するんですか!これ以上は思いつきません!面倒くさいです!」
「その態度が既に謝る気ゼロだろーが」
「不動相手にしては最大限の誠意を見せているつもりです」
「お前反省してねーよな?」
「だって…チームの雰囲気乱したことについては皆に申し訳ないと思ってますけど、不動に対しては間違ったことは言ってませんし…」
「てっめぇ…」
「あ!でも!」
「なんだよ?」
「不動のおかげでわたしのだめな部分に気づけました!謝罪はする気ないけど、これだけは言わせてください!…ありがとう」


にっこり、笑う。初めて会った日、あの人がわたしにしてくれたように、甘く柔らかく優しく穏やかに。不動は暫く言葉を失って視線をさ迷わせていたけど、はっとしたあとで小さく「やっぱり謝る気ねーじゃん」と呟いた。わたしはそれを笑顔で乗り切る。もちろん少し、いやかなり苛っとしたけれど、皆がわたしたちの仲直りを見守っている以上、険悪ムードに戻るつもりはない。わたしは皆でサッカーしていたいだけだから。それに不動も入っていてほしい。これは本当の気持ちだ。


「じゃあ練習を始めるぞ」
「「「おお!」」」


鬼道くんの鶴の一声に、皆が即座に同調して練習が開始される。わたしは秋ちゃんたちと一緒にベンチに下がった。ドリンクやタオルの担当を決めて、洗濯担当のわたしは汚れた分をランドリーに持って行く。今日も空は快晴だ。





「もしもし、みやこ?」
「その声はリカちゃん?久しぶりですー」
「久しぶりやな!みんな元気にしとるんか?」
「はい!新しい監督は厳しいですけど…皆楽しそうです。リカちゃんは元気?」
「ウチも絶好調やで!みやこは元気なん?」
「わたし、は、元気ですよ」
「嘘!声暗いで。ウチの声聞いたら思い出したんか?」
「…何でわかるんですかぁ…?」
「ウチも寂しいから…みやこと話してると思い出すわ」
「ふふ、わたしたち、一緒です」
「そやな、一緒や」


リカちゃんはそこで少しの間黙った。あの人がいなくなってから、リカちゃんは頑なにその名前を口に出そうとしない。わたしも同じ。あの人の名を呼んでも返事がない、その事実を受け入れたくないから。リカちゃんと張り合ったことは一度もなかった。わたしたちは同質で、だけど求めているものは大きく異なっている。しんみりしてしまった空気を吹き飛ばそうと、リカちゃんが底抜けに明るい声を張り上げる。


「そや、今度塔子と差し入れ持って行こうと思っとるんやけどな、いつがええかな?」
「わぁ!ほんとですか!嬉しいです〜それなら監督に―…」


あの人のところに行ける翼があったなら、わたしは迷わず飛べるだろうか。いまは、少し自信がない。

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