「あ、来ましたね!」


嬉しそうな声を上げるのが春奈ちゃん、にこりと微笑むのが秋ちゃん、つんとそっぽを向くのが夏未さんだ。みんなそれぞれ違った愛らしさを持っていて、こんな可愛い子たちにお世話される選手たちは幸せ者だと思う。彼女たちは純粋にサッカーを、そしてそれに打ち込む彼らを心から愛していて、毛色の違うわたしにしてみれば眩しくて堪らない。光が強ければ強いほど影は濃くなる。彼女たちは綺麗だ。だから汚いわたしは日毎に泥沼に堕ちてゆく。わたしは曖昧な笑みを返して、秋ちゃんの抱えたタオルを半分こしてもらった。そこでやっと気付く。これを今から練習で疲れた彼らに配るのではないか。大人しく夏未さんのデータ整理を引き継げばよかった。ただでさえ男の子が苦手なのに、雷門の選手とはまだ出会って間もない。気が滅入るのをひしひし感じながら、前をすたすた進む春奈ちゃんと秋ちゃんの背中を追った。


「お二人ってどんな関係なんですか?」
「あ、わたしも気になる!」


目的語を省いても誰のことを指してるのかは一目瞭然だ。いくら彼女たちがサッカーに情熱を注いでいるといっても、浮いた話が大好きな年頃の女の子であることには変わりない。こういった話に不慣れなわたしはどう答えてよいものか逡巡する。友達、ではないと思う。話したのはここに連れて来られる数日前だ。時間ではないと批難されるかもしれないけど、わたしは彼のことを実際何も知らないのだから友達と銘打っては失礼に当たるだろう。だけど、決して無関係ではない。


「…どんな関係なんだろうね」


わたしにも解らない。ただ一つ言えるのは、わたしが他人についてこんなに思考を巡らすのは生まれて初めてだということ。わたしは徐々に変わっている。それが正負どちらの方向にかは知らないし、興味もないけれど。瞼を下ろしたときに浮かんできたのは、あの自信に溢れた顔で、ほんの少しだけ不快だった。

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