―いいんですか、神様。


え、俺?皆本金吾、剣豪志望です。好きな食べ物は唐揚げ、だけどそれよりもっとずっと好きなのは、俺の横でよだれ垂らしながら口をあんぐり開けて熟睡してるこいつ。どれぐらい好きかっていうと、こいつをおかずにしたら、食堂のおばちゃんのご飯50杯おかわり出来るくらいかな。あ、言っとくけどおばちゃんの料理が美味しいからってわけじゃない。でもこれを本人に教えたら「じゃあやってみてよ」って意地悪言い出すから内緒にしろよ。どれだけ好きかっていうことの比喩でしかないから、その辺はわかってくれよ。あ、勿論おかずって変な意味じゃないから、…ほんとに違うから!俺は団蔵と違って下半身で生きてるような男じゃない!あ、いや、今のも内緒な。



しょっちゅう喧嘩もするけど、最後にはいつもこいつが譲ってくれる。だから別れたいとか考えたことはない。こいつはどうか知らないけど、そうだと信じてる。でも俺の涙腺は脆いから勝手に涙が溢れてくることも多い。だから有耶無耶になることの方が多いのは謝りたいと思ってる。ごめんな。それでもこいつは何てことない顔でまた笑うから、俺はありがとなって同じように笑うんだ。この繰り返しで残りの一生も過ごしていけたらいいな。それで最後の最期に俺はこいつが好きだって言う満面の笑顔で「ありがとう」って言うから。こいつも泣いたり怒ったりしないで、微笑んでくれたらいい。



俺が剣豪になりたいのは、こいつを守れるような一人前の男になりたいから。俺がこいつの傍にいたいのは、昨日も今日も明日も笑って幸せに生きたいから。俺はこいつなしじゃあ生きる意味がわからない。忍だって不完全で不安定な人間だからさ、ほんとは淋しいときだってある。そんなときには神様に内心でそっと尋ねてみたりする、我ながら柄じゃないけど。

こんなに好きでいいんですか?
こんなに信じきっていいんですか?

だけど神様は答えてはくれない。当たり前か、俺たちは神や仏を信じちゃいない。だけどそれじゃあ困るから、自分で勝手に決め付ける。俺が選んだ人だから、俺が愛した人だから、俺が望んだ人だから、問題なんてあるはずがない。


前髪を掻き分けて額にキスを落とすと、小さく身じろぎする。そのあどけない表情に俺の胸はきゅっと締め付けられ、逆に頬はだらしなく緩んだ。どくん、どくん、重なる鼓動。何にも邪魔されない。世界で一番、俺がこいつに近い場所にいる。なあ、神様。俺、こんなに幸せでいいんですか?

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