ひとつに




「先生、あのっお風呂は……」
「ごめんね」

有無を言わせないとでも言うように、ベッドへと連れられ、倒された。
会話を止める、荒々しい口づけ。息が止まってしまうんじゃないかと思った。苦しくてもがくわたしの制服のニットが脱がされていく。捲りあげられたブラウスから中途半端にブラジャーが見えて、恥ずかしい。薄くつけられた間接照明が余計に気持ちを煽る。
パチンとホックを外された。ブラウスのボタンを一つ一つ外され、開けたすき間からあらわになった胸が見えてしまう。それ、もっとやだ。胸を隠そうとするけれど、先生はだめだとそれを許さない。

「……全部、見たい」

言うと共に先生の顔が胸元にうずまる。
濡れた舌で突起を舐めあげられて、息が詰まった。悲鳴じみた声は、わたしの声じゃないみたいで、おかしい。やわらかい先生のくちびるが弄ぶみたいに触れ、離れる。舌をべたりとくっつけて、首筋から胸元、脇腹から臍と、体中を舐められる。ときどきわざと音を立てて吸い付かれ、どうしたらよいのかわからないままに声をあげるしかない。体のすべてが先生に食べられてしまうみたいだ。
足を軽く開かれ、内股に舌が這う。
スカートの端が捲れて、ふともものあたりに先生の頭部が見えた。わたしのスカートの中に先生が。普通ならありえない光景に顔を背ける。
ふくらはぎをするすると撫でながら、舌を器用に使って足の付け根を舐められると、体の中心がじわっと熱を持つ。爪先をぎゅっと縮ませると、腰が否応なしにうねってしまった。

「どうしたの?」
「いえ……なんでもっ」

先生の指先が、足の付け根をなぞる。敏感なその間にギリギリ触れないぐらいの触りかた。そのたびに体が疼き、足同士をこすりつけたくなる衝動に襲われてしまう。せわしない、浅い呼吸がさらにその感情を高ぶらせる。わたしの体が揺れると先生はうれしそうに微笑んだ。

「おいで」

抱き上げられ、あぐらをかく先生の膝の上に乗りあげる。膝立ちをしなくちゃいけないのに、膝が震えてしかたがない。先生の首に腕を回して抱き着く。耳元に息を吹き掛けられて、首筋をひと舐め。臀部からふとももをゆっくり撫でながら、先生はわたしの顔をじっと見つめてくる。

「見ないで、ください」
「どうして。……そんな物欲しそうな顔、はじめて見た」
「そんなこと……ふぁっ」

先生の指先が下着のすき間から入り込む。
ツッとなぞられた瞬間、体からあふれでるような快感。ぬるついた音と感覚。濡らさなくても入ったねと、囁かれる。なんでそんなこと言うんですか。
指がうごくたび、くちくちといやな音がする。長い指の半分も入っていないのに、異物感で、変な感じがしてしまう。きゅっと締め付けると下半身すべてが固まるような感覚。眉を寄せつつも先生に寄り掛かると、大丈夫かと、すこし心配そうな声が聞こえた。頭を縦に振って答える。

「……ここは」
「んっ、ああっ、そこ」
「気持ち良い?」

小さな突起に刺激が走る。ぬるついた液体を塗り付けるようにして触られ、激しく体がうごく。腰がゆるゆるとうごいて、自分が保てない。気持ち良い。膝が揺れて、体勢が崩れそうになる。耳元に聞こえた声。

「もっと、声出して」

押し付けるようにして往復する指のうごきが激しくなる。出したくなんてないのに、先生から言われてすぐ、口から甲高い声がもれた。こんなのわたしじゃない。まただ、また。あの感覚。

「あっ……せんせ、堺先生っ」
「ん? なに」
「なんか、あっ……変になる、やっああ、イッちゃ……」
「……いいよ」

ビクッと体が跳ね上がったあと、意識がふわふわと飛んだ。のに。先生の指は突起から、またその奥へと移動してしまう。さっきと同じくらいの深さまで指が入り込む。ぬるつきが増したからなのか、スムーズにうごくせいで、体が休まらない。力が抜けない。どうしたらいいの。

「せんせ、やだっ」
「……もうすこし、我慢して」

やさしくキスをされて頷くと、指がさらに奥まで入ってきた。そこを広げるような指のうごき。ぐるぐると、かきまぜるみたいに。すこしだけきつくて、苦しい。息を止めたくなる。そのまま、しばらくうごきまわったあと、ゆっくりと先生の指は抜けた。
 膝から降りて、ぼうっとしつつ息を整えていると、先生が服を脱いだ。
しっとりと濡れた白い肌が、淡くピンク色に染まっている。目をつぶると、カチャカチャとした金属音とビニールを破くような音が聞こえた。薄く目を開く。わたしは腰を引き寄せられ、そのまま後ろに倒されてしまった。
片足を持ち上げられて、下着を完全に脱がされる。普段は隠されたその場所が空気に触れてゾクゾクとしていると、ふと熱いなにかが宛がわれた。ピタリと吸い付くようなそれは、入り口を混ぜ合わせるように浅く出入りをしたあと、躊躇いがちに、けれど、ぐっと中に入り込んできた。

「……喪子さん」
「んっ、ああっ……いっ……」

痛い。ぐいぐいと入ってくる先生のもので体が埋まってしまうような気がする。涙がにじんだ。まだ半分も入っていないだろう。我慢できる痛みだけれど、やっぱり痛い。濡れているぶん、滑りは良いはずなのに。

「……だめ?」

堺先生が心配そうに問いかけてくる。
わたしはううんと頭を振って、先生の背中へと手をのばした。我慢しなきゃ。先生だってつらいのに。無理しないでと先生は言うけれど、それでもわたしは。

「いいんですっ、はやく……」
「……喪子さん」
「一緒が、いいんです」

ふっと先生の顔が緩まる。
そして心を決めたように、わたしの腰を掴んで、ぐっと体を倒した。先生がわたしの中に、一気に入り込む。先生の背中へと回した手が、背中に爪を立てる。先生の苦痛の顔が見えたあと、頭が真っ白になって、なにも考えられない。その一瞬はひどく長いように感じられた。

 目を開けると顔をしかめる先生の姿。きっと快感だけじゃないんだろう。ゆっくりとうごきだす体。ジワジワとくる痛み。思わず大きな声を出し、先生に縋り付く。

「んん、んあ、先生っ……」
「力、抜いて」
「無理、です……! ふっ、う……」

くちびるを塞がれて、声が消える。
舌を絡め、吸い付かれると、甘美で頭がぼうっとする。歯をなぞったりベタベタと舐めあげる舌のうごきに、ようやく痛みが薄れてきた。

「せんせ、ふぁ、ああっ」
「……違う、もう、先生じゃない」
「ん、やっ」
「名前で、呼んで」

お願いだからと熱い吐息と共に吹き込まれる。もつれた舌で、わたしはひたすらに名前を呼んだ。雅人さん、好き。雅人さん。縋り付いて、泣きじゃくる子供みたいに、ただひたすら。

「喪子」
「やぁ、やっ、またっ……」
「……どうしたら、伝わるの」

耳朶を甘く噛まれる。
規則的な腰のうごきがはやまると、わたしの体も同じようにうごく。ベッドが軋む。共鳴するみたいに、わたしと先生の荒い息と声が響く。もうだめだ。意識が遠くなり、体から力が抜けていく。ただ先生に任せるしかない。好きです。もう一度、舌の足りないようなしゃべりで伝えると、わたしはビリビリとした快感を感じて目を閉じた。

「離さないよ」

先生の声が聞こえた気がした。






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