好きだよ

なんなんだよお前は。
そう怒鳴られて、私の肩は揺れた。


「なに、」
「なんでお前が、ハルと」
「それは呼び出されたからで」


ち、と舌打ちする松岡くん。あぁもう彼の舌打ち何回見たかわからないや。


「なんなんだよ…俺を乱すな、うぜぇんだよ！なんで、」
「松岡くん…？」

「お前は、俺が好きなんだろなのになんでハルと…！」
「だから、…わっ」


掴まれたままの腕を引かれる。これも何回目かな。松岡くんの腕の中、呑気に考えた。この状況で、実はすごく焦ってる。だってまるで、松岡くんは、


「松岡く、」
「黙ってろ」
「え…っ、んんっ」


顔をあげたら、後頭部に手を回されてぐっと顔が近付く。あぁ、近い、やばい、かっこいい。発せられた声は低くて、どくんと五月蝿く心臓が跳ねる。吸い込まれそうな瞳は綺麗。そう思った次には、松岡くんの唇が重なっていた。

息の仕方なんてやっぱりわからなくて、鼻から抜ける自分の声が気持ち悪い。少し離れた唇、息を吸ったらまた、前みたいにぬるりと松岡くんの舌が入ってくる。上あごを舐められて、舌が絡む。時折もれる松岡くんの声が、色っぽい。

掴まれていた腕はいつの間にか離されていて、私の腰に回された。ぐっと腰を引き寄せられて縮む距離。後頭部にあった手は私の頬を撫でて、ゆっくりと唇が離れた。


「はぁ…っ」
「俺を見てろ」
「っ、は、松岡、く…？」

「俺以外見たら、許さねぇ」


松岡くんの目はどこか寂しげで、私は、ゆっくり頷いた。嬉しい、


「松岡くん」
「…なんだよ」

「好き、」


黙れ、と松岡くんは私を抱きしめた。どくどくと早い鼓動は、私と松岡くんのどちらだろう。


「おい」
「、なに？」

「俺と、付き合え」
「っ、うん、付き合う」


松岡くんに抱きしめられたまま、私も彼の背に腕を回してぎゅっとしがみつくように抱き着いた。びくりと松岡くんの肩が揺れたけど気にしない。


「松岡くん」
「凛でいい」
「凛くん」
「凛」

「…りん」


恥ずかしい、けれど嬉しい。少しだけ身体が離れて松岡くんを見上げる。目が合うと、彼は少しだけ顔を赤くしてた。夕陽のせいだって言うかもしれないけど、ね。


「帰るぞ」
「うん！」


抱きしめられたときに落ちた荷物を松岡くんは持ってくれた、持つと言ってもきいてくれなくて、どうしたものかと思っていたら、手を掴まれて。


「行くぞ、梓」
「っ、うん」


松岡くんに呼ばれると自分の名前が特別なものみたいで、嬉しい、くすぐったい。指が絡んで、一歩前を歩く松岡くんの隣に並ぶ。


「凛」


私を見た彼は、少しだけ嬉しそうに目を細めた。



(いつの間にか、)
(こんなにも)

20131019
一応、完結…？
よくわからない…！