歌が好きだ。
曲を作るのも、詩をつけるのも、それを歌うのも。

200倍という超難関、早乙女学園に入学したものの、私は卒業試験で結果を残せず、デビューすることができなかったことからシャイニング事務所に所属できず卒業した。いま人気急上昇のST☆RISHは学園の同期で、四ノ宮那月とは一度ペアを組んだこともある。

作曲家コースに所属していたけれど、元の夢はアイドルだった。私は、歌って踊って、作曲をして、演技して…様々なことに挑戦したかった。早乙女学園でも願書はアイドルコースにしたのに、何の手違いか作曲コースにいれられたのだ。

卒業オーディションには業界の人もたくさん見に来ていて、当日来ていたそれなりに大きな事務所に作曲家としてスカウトされたが、私は新人アイドルとして奔走中である。

「おはよう、詩音」
「榊さん、おはようございます。今日も宜しくお願いします!」

「うん、いい声ね!」


マネージャーは榊さんという女性。業界でやり手のマネージャーだと有名らしい。面倒見のいいお姉さんって感じだから、マネージャーというより姉みたいなものだ。


「今日はHE★VENSと共演だから気合いいれなさいよ?」
「HE★VENSって新人だけどめちゃくちゃ人気の?」


そうよ、と笑う榊さんは綺麗。マネージャーじゃなくてモデルをすればいいのにと思うくらい。


「そういえば…この間の新曲、オリコン確認した?」
「…怖くてしてない」
「ばかね、ちゃんと確認しなきゃダメじゃない。ほら、見なさい」


ばさり、手渡された雑誌の付箋がついたページを開く。


「う、そ…!」
「嘘じゃないわよ、おめでとう」


Shiyu、順位は1位。このご時世で、こんなにたくさん買ってくれたんだ…嬉しい。


「社長がお小遣あげるって言ってたわよ」
「え、マジで!」


ドラマ主題歌、バラエティのテーマ曲として売り出され、全A面のシングルはオリコン1位だった。信じられない、けど何度見てもそこには1という数字。


「HE★VENSに勝った、って世間じゃすごいことになってるみたいよ?」
「うわぁ…嬉しいけど怖い」


あら、どうして?とミラー越しの榊さんと目が合う。考えるだけでゾッとするんだけど、


「HE★VENSのファンの子達…エンジェル?達に叩かれそうじゃん」
「あぁ…でも詩音の歌は女の子が共感できる歌詞だから女の子にも人気あるわよ

事務所帰ったら届いてるファンレター渡すわね」


今日の歌番組は、オリコン1位おめでとうって感じのやつらしいから、なんだか楽しみになってきた。
それにしてもHE★VENSも新曲なのに…なんだか、申し訳ないというか、やっぱり怖いというか。


「ねぇ詩音、HE★VENSだと誰が好み?私、皇くん好みなんだけど!」
「え、榊さん無口好きなの?私はナギくんかなぁ、HE★VENSなら」

「HE★VENSじゃなかったら?」
「那月くん、ST☆RISHの。彼、めちゃくちゃ歌上手いし、背高いけどほわほわで可愛いんだよ」


ペアをくんでいたことを知ってるから、なるほどと声を漏らした。さらに、ST☆RISHなら榊さんはトキヤくんが好きらしい。トキヤくんの歌声は私も好きだ。


「あ、そうそう。詩音ドラマ出たいって言ってたよね」
「うん、出たい勉強したい」

「今度オーディションがあるみたい。参加したい?」
「したいしたい!」


じゃあ社長に連絡しとくわね、と榊さんは笑って車を運転した。


新人アイドル


さて、初の歌番組がんばりますか!



20130627

HE★VENS連載開始!

HE★VENSでてきてないけど(;ω;)