海辺の教会にボクはいた。
これからレイジと彼女の結婚式が行われるという。QUARTET NIGHTとして参列ことになったボクは、ランマルとカミュの間に立っていた。
「おい藍」
「…なに」
「お前、あの女のこと好きだったんだろ」
「どうしてそう思うの」
「嶺二と一緒になる前、お前があの女と一緒にいただろ」
「…知ってたんだ」
ランマルは、彼女から相談を受けていたという。
ロボットだということも全部知っていてボクに告白したこと。
その少しあとにレイジに告白されたこと。悩んで悩んで、彼女はレイジを選んだこと。
ボクが抱きしめたあの日、彼女がレイジに別れを告げたこと。
レイジが別れを拒み、彼女が泣きつづけたこと。
ボクの気持ちも、彼女の気持ちも、レイジは全部わかっていたこと。
彼女が妊娠して、シャイニーに報告し結婚すると決めたこと。
彼女が、今はレイジを愛していること。
初めて聞かされた話にボクは、どうしようもない消失感に見舞われた。
もう、どうすることもできないんだ。知ったところで後悔しかなくて、笑ってる彼女をみていると胸が苦しくて。
「アイアイ!」
「、レイジ」
「ど、綺麗でしょ?」
「…うん、綺麗だと思うよ」
「彼女はちゃんと幸せにするから」
「泣かしたら、許さないよ」
「わかってるって!」
笑うレイジに、悔しさを覚えた。彼女に出会ってから、ボクは変わったんだ。色々なことを覚えた、知った、体験した。
恋をしたんだ、彼女に。
あの日ボクが告白の返事をしていたら、今も君は隣にいたのかな。笑ってくれていたのかな。
「なまえ」
「藍、名前…っ」
「うん、初めて呼んだかもね」
ウェディングドレスを着て、いつもより数倍綺麗な彼女が顔を歪める。
「ずっと、好きだったよ」
「う、そ…」
「本当だよ、君が告白してくれたとき…ボクは好きという感情も、告白の意味もわかってなかった。
…ねぇなまえ」
「な、に…?」
「君は今、幸せ?」
「っ、うん…わたし、幸せだよ」
「そっか、おめでとう
幸せになって。君の幸せが、ボクの幸せだから」
「うん、うん…っ」
ありがとう、そう言って笑った彼女は、今までみた笑顔の中で一番綺麗で、思わず、ボクも笑ったんだ。
純白の後ろ姿を
見送って
(今は素直に言えるよ)
(幸せになって。)20130426
お題サイト「瑠璃」様から、セットお題をお借りしました。
お付き合いいただき、ありがとうございました。