レイジはよく彼女を連れてくることが多くなった。けれどそれは、彼女がレイジの担当マネージャーになったかららしい。

いやだと思うこの感情がわからないまま時間は過ぎて、ぼうっとすることが増えたボクを、彼女は時々心配してくる。

やめなよ、レイジの前だよ。
ボクを好きだと言った君は、レイジの恋人になったんだ。

けれど、どこかで嬉しいと思うボクもいた。まだボクを好きなの?返事、ちゃんとしてないよ。
ボクはロボットだけど、感情が生まれたんだ。有り得ないはずの、感情が。


楽屋で、彼女と二人きりになった。レイジは今撮影に行ったばかりで、体調がよくない彼女を気遣い楽屋で待っているように告げたらしい。

ボクと二人きりにしたのに意味はないだろう。ボクを、信用しているのだろうか。


「…体調悪いんでしょ、座れば?」
「藍…」


久しぶりに、彼女から名前で呼ばれた。あぁなんだろう。暖かい何かが生まれるような。


「顔色悪いけど」
「わたし、」
「なに?」

「わたし、やっぱり藍のこと」


がたん、と音を立てて立ち上がると彼女を抱きしめた。びくりと揺れた彼女は固まったままだ。


「じゃあレイジが帰ってきたらすぐに言いなよ、別れるって」
「え、」

「言えないでしょ?」


レイジは、優しいから。
彼女はレイジのこと、好きになっているんじゃないかな、なんて。
ボクもね、君が好きだよ。好きみたいなんだ。けど、ボクはロボットで、君はヒト。

そして君にはレイジがいる。


ぎゅっときつく抱きしめて、言った。












「君はレイジとお似合いだよ」



愛の言葉を
飲み込んだ


(言えるはずないよ)
(だってボクはロボットなんだ)



20130426

彼女最低なことになってますけども。その2