「あ、それってメインスポンサーが神宮寺財閥のアレ?」
「そうそうっ、龍也も声かかったんだけど違う仕事あるからって断ったみたいなのよぉ…」
事務所内の談話室で林檎とコーヒーを飲みながらの会話である。レンくんの参加が決定したらしいファッションショーはかなり有名で、メインでと言われたらしいレンくんは複雑な様子。林檎いわく「家族仲の問題」らしいけど。
「レンくんって家族仲悪いの?」
「うーん…悪いっていうか、なんていうのかしら、財閥ならではって感じ?」
わかんないよ…と零せば林檎はあたしからは言えないと眉を下げた。レンくんに直接聞くべきなんだろうけど、傷をえぐることに成り兼ねないので、聞くことはしない。
「神宮寺財閥かぁ」
「どうしたの?」
「レンくんのお兄さんと私の姉が知り合いなんだよね」
確か姉が出演したファッションショーでもスポンサーをしていたらしく、話しも合ったことから仲良く?なったらしい。
「イケメン財閥跡取りゲットよー!」と嬉々として電話してきたのが記憶に新しい。
「…あの子にも色々あるから…見てあげて」
「ん、了解」
「まだ、あの子とだけちゃんと話してないんでしょ?」
「うん…ちょっと苦手な部類、かな。女の扱いに慣れすぎてるところとか、」
「ふふ、あの子の良いところ麗奈ならすぐわかるわよ」
それじゃ、あたしは仕事行ってくるわねと林檎は席を立つ。時計を見れば私もそろそろ移動する時間だ。まだまだ時間はあるけど、とりあえず飲んだものを片付けて龍也がいるであろう部屋に向かう。
「…レディじゃないか」
「レンくん」
「どうしたの、龍也さんに用事?」
「うん、次の仕事についてちょっとね。レンくんは?」
俺は…と言いかけて口をつぐんだレンくん。きっと、ファッションショーのことだろうから、触れないでおく。
「今度、ファッションショーに出ることになったんだ、その話しだよ」
「ファッションショー?」
「あぁ、神宮寺財閥がメインスポンサーのアレさ」
自嘲するように笑い、レンくんは手元の資料をひらひらとさせる。なんて、いえばいいかな。言って、ほしいのかな。
「すごいじゃない、きっと翔あたりが羨ましがるわよ」
「……それだけ?」
「え?」
レンくんの顔は、見えない。ただ、欲しかった言葉ではないようだ。
「レンくんの家の事情はわからないけど、これは仕事よ。割り切るしかないわ」
「…そうだね」
「私は春歌みたいに優しい言葉をかける気はないから、期待してるなら無駄よ
与えられた仕事なんだから、誇りもってやらないと。出たくても出れない人だって沢山いるんだから」
翔とか、と言えばレンくんはくすりと笑う。そうだね、と綺麗な笑みを浮かべると私の髪を掬い上げる。
「レン、くん?」
「…ありがとう、レディ」
「な、ちょ…!」
髪の先に唇を落とし、慌てる私を見てぱちんとウインクする。あぁ、だから苦手なのレンくんは!!
「見に来てくれるかい?」
「仕事がなければ」
「それでもいいよ、待ってる」
ぽん、と頭に手が乗せられてレンくんは楽しそうに笑う。こんな笑顔は、初めてだ。
「レディ」
「…そのレディってやめて」
「じゃあ、麗奈」
「なに?」
「仕事、頑張って」
じゃあね、とレンくんは手をあげて去っていった。なんていうか、色気!なにあの色気、だからあの色気はどうなってるの!彼まだ未成年でしょ…?
髪の毛に、キス
20130905
久々更新。
レンレンのターン!になってればいいなぁ。