「んー…んまーい!」
「でしょでしょ!…って言っても僕ちんも初めて食べるんだけどっ」
ソフトクリームは濃厚で、絵面的にコーンよりカップで食べたほうがいいと判断されてサンデーになり、私にはイチゴ、嶺二にはチョコのソースがかけられている。
「嶺二嶺二、チョコ一口!」
「いーよん、麗奈ちゃんのも一口ちょーだいっ」
カンペに「あーん」と書いてある。え、今めちゃくちゃ急いで書いたよね!?私は普通にスプーンでもらおうとしたんだけど…
「じゃあハニー、あーん」
「う、うあ…う、あー、ん」
うわぁぁあああああ恥ずかしいいいい!いい歳になった大人があーんって!しかもテレビって…。これ、カットしてくれないかなって思ったけれど、カップル企画なだけに放送されるんだろうなぁ。
「はい、一旦切ります!おいしい絵面ありがとなー二人とも!」
「あはは…恥ずかしいからカットしてほしいんですけど」
「えー!僕すごく楽しかったけどなぁ。麗奈ちゃんにあーんしてあげてあーんしてもらう機会こんなときしかないし?」
にやりと悪戯な笑みを浮かべる嶺二の背中をぱし、と軽く叩いて、次の目的地である旅館に向かう。まずは荷物を置いて、それからちょっとした観光らしい。
「さー麗奈ちゃん、車乗って乗って!旅館に向かうよー」
「はーい」
嶺二の車にまた乗り込み、シートベルトをつけると車はまた発進した。そして私は、またまたビデオを撮る。
「そうだ嶺二、今度シャイニング事務所の創立記念ライブ、ソロで出るよね」
「そうだよん、麗奈ちゃんが僕のために作ってくれた曲歌うつもりっ」
「ほんと?嬉しいなぁ」
先輩として、というか作曲家として自分の曲を歌ってもらえるのは嬉しい。中でも嶺二は本当に楽しそうに歌ってくれるから、私は嬉しいのだ。
「麗奈ちゃんも歌うんでしょ?」
「もちろん、何歌おうかなってずっと考えてるの」
と、ライブの話はここまでにして、旅行に戻そう。
「今から行くのって、若いカップル、夫婦限定プランがあるんでしょ?」
「そ、お高いイメージあると思うけど結構リーズナブルだし、オススメなんだよねぇ」
運転する嶺二をファンの子たちはあまり見られないから貴重だと思う。様になっているし、格好いい、と思う、顔も整ってて性格だっていい、面倒見もいい。
「カップルにオススメってことは、もしかして混浴、とかあるの?」
「おぉー、さっすがハニー察しがいい!今いくところは、部屋に露天風呂がついてるから、二人で入れるんだよ」
…まさか、まさか。
嶺二の説明に嫌な予感がしたけれど気のせいだと考えるのをやめた。車は旅館につき、荷物を置き浴衣に着替えて観光をした。
少し汗をかいたから、それじゃあ温泉に…となったのはいいけど。
「ほーら麗奈ちゃん、入っといで!」
「…入るの?」
「カップル企画だからねー、さー麗奈ちゃん着替えてきてー」
「……はーい」
いやもうこれ私、嶺二のファンに消されると思うんだけど。
諦めて水着に着替え、タオルを巻く。あらかじめ旅館には許可をもらっているからできることだ。
「お待たせしましたー」
「麗奈ちゃん、いらっしゃーい」
「わ、あったかーい…」
「もっと近くおいで」
ゆっくりと湯舟に浸かると嶺二に言われる。企画だからと嶺二の隣に行き、ふぅと息をつく。気持ちいい、あったかい、幸せ。温泉さいこう、景色もいいし温度もいいし、タダだし。
「嶺二、運転お疲れ様」
「ありがと、麗奈ちゃんもビデオお疲れ様」
互いにくすりと笑って、撮影が終わった。
「はい、お疲れ様ですー、あとは夕食で今日は終わりなので、とりあえず夕食できるまで入ってて構いませんからー」
「はーい
嶺二、まだ入ってる?」
「そうだなぁ、麗奈がまだ入るなら僕もまだ入ってようかな」
「……なにそれ、
まぁ、入るけど」
「ん、じゃあいちゃいちゃしよっか」
しないわよ!と嶺二の顔にお湯を飛ばすと、嶺二はぽかんとした顔になって、次に笑った。
「よーし、じゃあ僕も…ほーら!」
「ぶっ、ちょっ、やめてよー!」
「仕返しだよーんっ」
ザバザバとお湯をかけあい、湯が揺れる。なんだろう、まだ撮影があるし仕事だから疲れないようにしなきゃいけないけど、楽しい。
「わっ、」
「危ない、」
「きゃ…
…………嶺二、ありがと」
嶺二にお湯をかけられて髪が濡れて重くなり、首を振っていたら、目が回った、というか頭がぼうっとして後ろに倒れそうになった。刹那、嶺二は私の腕を引いて。
私は、嶺二の腕の中。
「はぁー、危なかった
頭ぶつけてない?」
「ん、だいじょうぶ」
肌と肌が、密着してる。
ドキドキと心臓がうるさい、引き締まった身体に、回された腕の逞しさ。
頭が、くらくらする
1日目、旅館。
20130727
久々になってしまいました。
グダグダしすぎもあれなので、旅行編は次で終わります。