先輩としての、





「よろしくね、七海さん」


にっこり、笑ってみせた。ほぅ、と彼女は私を見て。すぐにはっとすると宜しくお願いします!と頭を下げる。うん、いい子だわこの子。ST☆RISHのように面倒…じゃなくて大変そうなことも少ないだろうし、うん。マスターコースでは厳しく、でも楽しくやっていけそう。


「私はアイドルやってるけど、さっきの嶺二達の曲作ったし、君達がアイドルをしていれば私の曲を歌うこともあると思う。

七海さんのマスターコースの担当ではあるけど、この中で一番アイドル歴が長いのも私だし、ST☆RISHも一緒に面倒みるつもりだから、宜しくね?」


言うと、みんなホッとしたように「宜しくお願いします」と頭を下げてきた。あれれ、いい子達じゃない。と、そこで一ノ瀬トキヤと目が合う。彼が「HAYATO」として仕事していたときに、よく遊んだものだ。



「…HAYATO、久しぶり」
「はい、お久しぶりです」



彼が無理していたことは知っていた。テレビで見せる無邪気な笑みが偽物だと気付いたのはいつだったか。本当の君を見せて、なんて男だったら相当気障なことを言った私に、彼は苦笑しながらも胸の内を話してくれたのだ。学園にいることも教えてくれた。こうしてまた会えたことが、嬉しい。


「トキヤ、知り合いだったの?」
「えぇ、HAYATO時代に、少し」


少し、ではないけれど彼なりの照れ隠し、というかあまり知られたくない過去だからだろう。くすりと笑って彼らを見回すと、蘭丸担当の神宮寺くんとバッチリ目が合った。


「よろしく、子猫ちゃん」


ぞくり、鳥肌が立つ。え、いまどきそんな臭い台詞言う人がいたんだ?ふふ、やだ鳥肌すごい。


「よろしくね神宮寺くん」


「あ、あの…!気になったんですけど、」
「うん、なにかな?」

「一番アイドル歴が長いって…寿先輩達より、先輩ってことですか?」


あぁそうか、年齢でいうと私は彼らより下だから。それにデビューしてからの数年、彼らはまだ子供だったわけで芸能人を見て話題になることがあっても、誰が先輩で、実は年下だけど先輩なんだよ、なんて話興味だいだろう。


「言ってなかった?
麗奈は私と龍也の同期、早乙女学園の一期生よんっ」


再び絶叫。といっても絶叫したのは数人だけど。


「…後輩だと思われてた感じ?」
「あ、いや…あの、すごく若いし可愛いから…その、」


素直な感想を言われて顔が熱くなりそうだ。彼、一十木音也くんは慌てながら答えた。
ふぅ、と息を吐いて調子を取り戻そうと二人を見遣る


「林檎、龍也仕事は?」
「今日は夜にラジオがあるわ」
「俺は社長に頼まれてる仕事がある」

「そう、じゃあもう行って。あとは私が」


お願いね、と林檎に言われて頷くと、二人は練習室を出ていった。
さて、と嶺二達に向き直ると3人は少しだけたじろぐ。


「嶺二、蘭丸、藍
3人もきっちり指導するから、覚悟しててね?」


ぽかん、と口を開けた3人に「ね?」ともう一度笑って見せると、頷いた。


先輩としての、



(敬語使えってわけじゃなくて)
(見下されてる感じが嫌)

(私だって、相当苦労したもの)



20130417

よくわからないわぁあ