恋心はフクザツ



部屋に戻って就寝準備を終わらせ、ホットミルクでも飲みながら話そうかと牛乳を温めてから春歌に手渡す。

その間、春歌は妙にそわそわしていたから、可愛いなぁ、と思った。妹がいたらこんな感じなんだろうな。私は末っ子だから、春歌が妹ならいいのにと思う。


「さて、話そうか」
「はっはい…」

「ふふ、緊張なんてしなくていいよ

私の好きな人、だっけ」
「…はい、」


ぎゅっとパジャマを握りしめる春歌は、相当緊張というか切羽詰まっている様子だった。


「私に、恋愛対象で思う好きな人はいないよ」
「…え、」

「恋愛禁止だからってわけじゃなくて、私には恋とか愛とかわからないの

もちろん、好意を持ってくれる人の気持ちは有り難いし、男の人にドキドキするってこともあるけど…それが恋とは形容しにくい」

「…そう、ですか」


俯いた春歌に、申し訳なく思う。ちゃんと答えてあげたかったけれど、わからないものはわからないのだ。


「どうして、突然聞いたのか、教えてくれる?」
「っ、わ、私…」

「ゆっくりでいいから、言ってごらん」


私、いけないとわかっていても、好きになってしまったんです。と零した春歌。肩が震えていて、抱きしめたい衝動に駆られた。


「誰、とか聞いても?」
「………一十木くん、です」


あぁ、そうかやっぱりか。聞けば、学園にいたときからよく一緒にいたらしい。この間、音也が育った施設で色々とあり、音也への恋心を自覚したようだ。


「でも一十木くんは、麗奈さんを好いているから」
「、春歌」

「麗奈さんが色々な方に好かれるのも、わかるんです。私も、その一人ですから
私にないものを、沢山持っていて、本当に、羨ましい、です」

「……それで、協力してほしいって話なのかな?」
「っ、!」


声のトーンが、落ちてしまう。春歌はびくりと肩を揺らして私を見た。


「私、人の恋に協力とかはしない主義なの。春歌は可愛い後輩で、妹みたいな存在だけど…甘やかすつもりはないわ

音也と恋人になりたいなら、自分で頑張りなさい

そして、今はまだわからないけど…私も音也のことを好きになるかもしれない。そうなったら、ライバルね」

「麗奈、さん」
「恋愛の面倒くさい感情で春歌と仲違いしたくないのよ」


うっすらと涙を浮かべて、春歌は私に抱き着いた。ごめんなさい、ごめんなさいと搾り出すように紡がれた言葉に、胸が痛くなる。ぎゅっと抱きしめると、春歌は嗚咽を漏らして涙した、


恋心はフクザツ


(泣かせたく、なかったけど)



20130705
うわぁ、またヒロイン嫌な人だよ…考えがあってのことなのですがね、

音也は自分を好きで、ヒロインはそれを知っているのに春歌に協力すると、音也に失礼だと思うんです。
オレは麗奈のこと好きなのに、それを麗奈は知っているのに、となりますよね。
そして今回は春歌ちゃんも悪い子になってもらっちゃいました…辛かった。
でもどこかで、ヒロインは協力してくれないとわかっていました。だって、人の気持ちを考えて行動する人だと、春歌は序盤で理解したのですから。

とまぁ、長々と語ってしまいましたが、ヒロインと春歌はここからさらに仲良くなるんじゃないかな、と思います。
やはりヒロインを尊敬していますから、仕事でも女性としても目標になるわけで、甘えるときは甘えて自分で頑張るときは頑張ってもらいましょう(笑)