仲直りのあとは



ぺたり、床に座り込んでしまった私は頭を抱えた。なにあのフェロモン、なにあの子なんなのあの子…!最近の子…ってあまり年齢変わらないけど怖い!


「うわぁぁ…」


がくり、うなだれるとばし、と頭を叩かれた。痛い、誰…?


「なにやってんだこんな所で」
「らん、まる」


顔を上げると、眉を寄せて蘭丸が立っていた。立ち上がるとレンに隙を見せるなと怒鳴られてしまい、先ほどのアレを見られていたのだと悟る。私どれだけ見られたら気が済むんだ…っていうか私に罪はない…!


「レン君、怖い」
「あぁ?」

「なんなのあのフェロモンはまだ未成年でしょあの子!」


知るか、と蘭丸は私が持っていたノートと筆記用具を奪って歩き出した。ついてきてくれるのかな、


「いつもの所か」
「あ、今日はもう一つのほう。いつものとこには春歌がいるから」


そうかよ、と蘭丸は一度止まった足を再び動かす。うん、来てくれるんだ。

蘭丸はロックテイストの曲を好む。5人で歌う際の承諾条件は2曲で、いつもロックにロックに、と思いながら作曲していて…今回もまたロックでいこうかなぁと思うけど、確かジャズも好きだった気がするから、一つはジャズテイストでいこうかなぁ。


創立記念ライブでは実力派が1曲必ず歌うことになっているから、きっとそれに使うんだろう。シャイニーにも許可とってそうだし…抜かりないからなぁこういうところ。


「今回、ジャズとロックの2つにしようと思うんだけど」
「あ?…あー、お前に任せる」

「そう?じゃあ生演奏にしてもらって、ベース蘭丸弾かせて、龍也にトランペット頼もうかなぁ」
「日向さんがやると思うか?」


やるんじゃない?と笑えば、まぁ聞いてみてくれと言われた。龍也と前にセッションしたとき楽しそうだったもんなぁ。


「お前は曲、決まってるのかよ」
「んーだいたいは。けど、なんか3曲やれって御達示でね

1曲はQUARTET★NIGHTとやるからいいとして…あと2曲。バリバリアイドルソングと…バラードか、バンドかなぁ」


バンド、と言うと蘭丸はぴくりと眉を動かした。どうかした?と聞けば、俺もやると一言。


「えっと…?」
「お前がギターボーカル、俺がベース、嶺二のとこの赤頭もギター、真斗がキーボード」

「ドラムは?」
「…いねぇか」

「じゃあ無理だね、」


言うと、蘭丸は溜息をついた。正直、さっきようやく話せたのに、今普通に話していることが不思議だった。そして、嬉しかった。


「…悪かった」
「え、」
「きつく、言いすぎた」


ぽつり、小さな声で呟くように言った蘭丸。蘭丸は悪くないと言っても、彼は悪かったとまた言った。


「本当は、言うつもりなかったんだ。告白されたこと

プライバシーの侵害かなって。でも、心配してくれてる皆には、仕事で迷惑かけた皆には、言ったほうがいいって、思ったの」

「…別に、客が喜んだからいいんじゃねぇのか」

「よくないよ、私プロだもん。龍也と林檎と同じ芸歴…や、合計したらそれより長いけど、

人に見せる、魅せるパフォーマンスできなかった。観客の人達は気付いてなかったけどね」


トキヤにも林檎にも龍也にも、シャイニーにも、両親や兄弟にも、実はあの日言われた。「今日は過去最低のパフォーマンスだ」と。わかってた、切り替えなきゃいけないって。私は、まだまだ弱い。


「いいんじゃねぇの」
「でも、」

「過去最低だったんなら、これ以上最低にならなきゃいいだけだ。
できんだろ、お前なら」

「そう、だね…できるよ私は。だって、皆のアイドル一条麗奈だもん」


言えるじゃねぇかと蘭丸は笑って私の頭を叩いた。決して痛くはないそれに、痛いと言えば蘭丸は次の創立記念ライブでぎゃふんと言わせてやれ、と笑った。


「言ってなかったけど、オープニングだからね」
「っ、はぁ?!」

「だから、オープニングなの。QUARTET★NIGHT初の大役を大人気の私とやれるんだよ、光栄に思いなさい!」

「はっ、楽しみにしててやるよ麗奈サン」
「なんかそれむかつく!
ていうか可愛くない!」


俺は可愛くなくていいんだよバァカ、と蘭丸は笑って練習室の扉を開けた。
こんなふうにまた話せていることが嬉しい。

さて、蘭丸の曲を作りますか。


仲直りのあとは



(仲良く曲作り、ってね)



20130629

ランランのターン!
おーるすたーでランランにぐっときました飛倉です。
ランランが可愛くて仕方ないと思うのは私だけでしょうか。最近ランランは、かっこいいより可愛いとしか思えません(笑)